laatste loodjes

 最近、’laatste loodjes’ (ラーツテ ローチェス)という表現を何度も何度も聞くので覚え、使っている。’Hoe gaat het met je laatste loodjes?’  とか ‘succes met je laatste loodjes!’ . とか。臨月の私の状況にちょうど使える表現で、直訳すると「最後の鉛」。「最後のひと頑張り、追い込み」という意味である。一つ目は 「最後のひと頑張り、調子は如何ですか?」二つ目は 「最後の追い込みがんばってね!」。

 偶然というかそれを知ってからか、この ‘lood’ という単語がやたらと耳に入る。’Glas in lood’ はオランダの古い住宅の窓ガラスや引き戸に見られる色ガラスの入った飾り窓。日本語では「ステンドグラス」のこと。あの黒い枠が鉛でできている。
 
 それから、in het lood staan (鉛において立つ)という表現は、「垂直になっている」ことを表す。先日ゲストルームを作るために、屋根裏部屋の壁紙貼りをした。床からまっすぐ垂直になっているかどうかを見るために、糸の先に鉛のついた小道具で調べた。上から垂らし、床までの垂直線を見つける。そこから、この表現がきている。

 オランダの住宅の窓で、上に向かって引き上げるタイプの窓は重たくなっているが、それは窓の両脇の枠内にロープで下がった鉛が入っていて、外からは開かないようになっている。だから窓枠の中の「おもり」も lood。
 
 「最後のひと頑張り」は軽くない・・・ということだろうか。演奏会の前でも曲が仕上がる直前というのは一番神経を使って、大変な最後の一歩である。妊婦さんの場合は、実際に重量が重くなるので、引きずるように階段を上る時の感覚と鉛というコトバが妙に合う。

日蘭出産事情

 もう2週間も前のことになるが、二人の日本からの助産師さんがオランダの出産事情や、働く女性と出産、ということの実情を調査しにいらっしゃっていた。そのモニターになってくれませんか、といつも行っている助産院を通じて連絡があったので引き受けた。

 問診を受けたり、お腹の触診のチェックの様子を見ながら、今何を質問しているのか、コンピューターでのカルテのシステムはいつ頃からオランダではしているのか、などとこちらのやり方を聞いていた。オランダではもう少なくとも10年はコンピューターで一人一人の情報管理をしているそうだ。私の通う助産院には4人の助産師さんがおり、そのうちの一人が出産に立ち会うことになっているので、どの人にも会っておくように、と言われている。私のカルテを開くと、4人の誰もが状況を把握できるようになっている。赤ちゃんがお腹の中にいる姿勢も記号で記されている。

 オランダでは約8割の人が、自宅出産で開始し、助産婦さんが陣痛が始まったら家に駆けつける。何かの事情で病院に行った方がよい、と判断されたら即、病院に移る。そして結果的には約3分の1の自宅出産率であるから、とても日常的なことになっている。興味があったので日本の助産師さんに、日本での実情を聞くと、なんと自宅出産率は0、2%で助産院での出産率も1、2%!! ということはほとんどの人は今時自宅出産はしない。 

 日本での産婦人科不足が言われているけれど、日本中での助産師資格保持者の数は、かなり多いそうだ。助産師さんとの自宅出産ができる環境がもっと増えれば、その問題も解決するのではないかな、とも思うのだが。

 ちなみに、オランダでは最初の妊娠2ヶ月頃のエコー検査のあとは20週目にエコーがある。それ以外はもう産まれるまではエコーはなしなので赤ちゃんの姿は目にしない。希望があれば、業者がやっている商業的なエコーや3DのDVD 撮影に申し込める。「身体の声を聞くように」と、オランダの妊婦さん向けの冊子によくある。スポーツや自転車乗り、飛行機での旅行、も自分の判断にまかされることが多い。ちなみにヨガクラスで自転車に乗るのを辞めたのは私一人。出産直前までオランダ人女性は自転車生活をしている。「何かあったら・・・」を言い出せばきりがないが、信頼できる助産師さんに出会えれば、異常を感じない限り、触診だけでも、エコーが少ないことに不満をもったことはない。オランダでは過剰な検査などはないので、放任されているようにも思えるが、そのためか身体は普通以上に敏感になっている。
 お腹を触って想像する限りである。