お琴とフォルテピアノの出会い

 
 この演奏会はフォルテピアノが演奏会で頻繁に使用されている、数少ない場所でもあるヘールフィンク・ヒンローペンハウスという博物館にて行われた。1787年製のブンテバルトというテーブルピアノに、19世紀初期のブロードウッドのテーブルピアノ、それに1848年のロンドンのエラールという3台が現在演奏会で使用可能である。元々は、アムステルダムのコンセルバトリーに常設してあった、スウェーリンク・コレクションというフォルテピアノコレクションからの楽器であったが、音大が引っ越しした後に楽器コレクションの置き場はなくなってしまったため、コレクションは現在ではいくつかの場所に分散してしまった。

 この博物館にもらわれた(置かせてもらっている)3台はとても幸運な楽器である。今では移って来た当時とでは比べ物にならないぐらい、命が甦り、声を発し、歌を歌えるようになった。最初の頃の半分眠った、ちょっとふてくされたような楽器が、笑顔になったように感じる。
 楽器の調整はまだする余地はあるが、フォルテピアノの学生から卒業生まで何度も演奏会に使われ、愛情を注がれて、17世紀そのままのような見事な内装の建物内で、絵のように美しく納まり、でも活きた音楽を奏でられている。

 
 現在3月末までの「日本展」の一環で、昨年ダイレクターの方に何か日本の楽器を取り入れた演奏会をしたいのだけれど、良い案はないかしらと相談されたのが始まりだった。最初は邦楽の演奏という案も紹介したのだが、結局フォルテピアノと共演してしまったらどうか、と思った。
 お琴はピッチの問題はA=410だろうが440ヘルツだろうが何でもすぐに変えることができ、調律法もフレキシブルであることがわかった。だが、まったく文化背景の違うところで育った楽器。デュオは可能なのだろうか?! という疑問で一杯だった。

 一柳慧氏の作品がすでに存在するらしい。それはエラールで演奏してみよう。
さらに、あと4ヶ月ほどしかないというところで、どなたかこのデュオのために作品を作曲してくださる方はいないだろうかと探した。オランダ人女性作曲家のミランダ・ドリーセンさんが約束できないけれど、実験的にぜひやってみたいと快くお返事してくださった。そして、曲が間に合った!

 ミランダの作品はテーブルピアノのために作曲してもらった。5オクターブの楽器で、ダンパーとリュートストップ、さらにテーブルの右半分の上部のふたが開閉できるタイプの楽器である。

 ミランダの作品はシンプルでコミカルなイメージが最初と最後の自由なダイアローグ的部分に挟まれている構成である。それぞれの楽器の奏法を生かした作品で、特に彼女の指定した調律法によって和音の響きが面白くなる!

 調律法は独特のもので、ここで全ては書かないがよくこういう調律法まで考えられるのだなあ、と感心するばかりである。
 

 ただ、、ただ、、、調律に約1時間はみる。。。前日にも一度、当日の朝と直前にもダブルチェックした。。。さらにこの調律法にすると、ハイドンのソナタは弾けなくなった。。。のでプログラムも実はこの作品をいただいた後に変更した。ドレミファソ、、、が普通のドレミ、、のようには鳴らない。

 一柳氏の作品とは全く違うキャラクターであり、どちらも演奏することによって、とても幅のあるプログラムとなった。

 リハーサルしてみると、お琴はとてもシャープな音から柔らかい音、爪を使うのも使わないのも可能、強弱もエラールのグランドピアノに負けないフォルティシシモからテーブルピアノにぴったりな音量にできたりと臨機応変。
「びーん」とか「じゃじゃじゃん、、、」という爪ではじく、腰の入った日本的な響きはかっこいい!

 結果、大好評に終わり、お琴とフォルテピアノの素晴らしい出会いの日はたくさんの方が聴きに来てくれて、皆で共有できたことがとても嬉しかった。特に、素晴らしい曲を作曲してくださったミランダ、ありがとう!

 

 (3月21日にミランダの曲は再演予定。同じ場所で4時から。25分くらいのプログラムなのでたくさんはできないが、もしご都合のつく方はどうぞ!プログラムの半分はオランダ人女優二人による「枕草子」劇である。)

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