風車でのコンサート

17日にアムステルダムの北地区にある風車の中のホールにて、リサイタルをした。

1772年、ちょうど若きベートーヴェンが、ウィーンへの留学に出発した年に建立された風車で、チョークのもとになる石(?)を風車ですりつぶして、チョークを製作していた風車である。

その風車がガラス越しに見えるように、小さなスペースが隣接されており、居心地の良いお庭と、その隣の家にいるクジャクやヤギの動物達がのどかな雰囲気を醸し出す。
天井の高い木目の壁、床、バックのガラスの壁と音響もとても温かく響いた。

60名程のほとんどオランダ人というお客さまも会場の「ダッチさ」に喜んでいた。

「5オクターブの中のベートーヴェン」というシリーズのプログラムで、私のシュタインモデルの楽器5オクターブで演奏できる曲で構成。この機会に、初期の作品2−3のソナタを再び勉強したことは、本当によかった。
 
アルカホリックの父は子供達の世話もできず、16歳で母を亡くしたベートーヴェンが、やっとウィーンで音楽の勉強できた喜び、ハイドンにレッスンを受けられた喜び。
躍動感のつまったハ長調のこのソナタは、恩師ハイドンに捧げられている。

その数年後に作曲した「悲愴」のハ短調は、なんと重苦しい助奏があることか。
すでに耳の異常を感じ始めた、苦労の多いベートーヴェン。

シンプルなフォルテピアノで、ベートーヴェンのストレートな表現をぜひ聞いて欲しいと思う。
たくさん音が重なるとフォルテの厚い和音、右手一声になると弱音でのメロディー、ハイドンやモーツァルトに聞こえてくる、古典派のスタイルがそのまま。フォルテピアノで軽快に弾ける小粋な装飾音。
ベートーヴェンのパッションは楽器を上手に、最大限に使用して表現されている。

楽譜は左から右に読むからか、ピアノを弾いていると、音楽は左から右に流れていくような気もする。(または音符が右に現れて左に消えていく)
でも鍵盤は垂直に打鍵。弦は平行に視界に入る。
出てくる音は垂直、だけでなくあらゆる方向に広がる。
そこにハーモニーの色があったり、鋭いリズムがあったり、音楽は本当に抽象的で、立体的で、つかむ事もできず不思議な、でもたくさんの「気」がつまっていてパワーのあるものである。

自分が音楽を奏でて、人に音の振動が伝わっていくのかと思うと、心地よいもの、美しいもの、温かいもの、パワフルな物、たくさんのよいものを届けられるようでいたいなと思う。