グラーフの御披露目間近

出来たてのフォルテピアノ(グラーフ)、最初に試させていただく機会でした。

Jan van der Sangen ヤン・ファン・デア・サンゲンさんの5年越しの作品。なんと生っぽい音。調理されていない生肉(?)と比べるのも変ですが、材料の木材が形となり、職人の手によって楽器となり、鍵盤となり、弦が張られ、音楽が奏でられる。弾き手とともに楽器が精製され、成長し、職人がさらに調整する。そのまだ生肉が焼けていないレアな段階に入る感じ。味付けも飾り付けもこれからです。

良いものを作ろうと目指していくこの過程に携わらせてもらっているんだ、と楽器を弾く姿勢に気が引き締まります。数年後に鳴る楽器を見据えて、良いエネルギーをたくさん受けて成長していってほしい。あと2週間では楽器にしてはまだまだ出来たてですが、お披露目ではこの楽器の持つ大きな潜在性を感じていただけるのではと思います。

まだ外塗装もされていない天然木の感触が音色にも現れます。
ハンマーの打弦部分にある、新品の鹿皮がこれからどんどん凝縮されて音色も日々変わっていくことでしょう。

6月19日のお披露目コンサートでは、ヤンさんが以前に制作したベームとともに2台フォルテピアノという超贅沢なコンサートを、素晴らしいピアニスト、アルテム・ベロギュロフ Artem Belogurov さんと演奏させていただきます。とっても楽しみです!

音色はこちらのインスタグラムにアップしました!https://www.instagram.com/kaoru.iwamura.1/

東からの電車

アムステルダムに行く電車の中、到着する頃にアナウンスがあった。「ウクライナからのご乗客は、到着ホームでさらにインフォメーションを訪ねて下さい」

毎日の悲しい、胸が張り裂けるような戦争のニュースがストレートに刺さってきた。電車はベルリン出発のドイツの電車である。ということは、ウクライナからポーランドに逃れてきた人たちが、ベルリンまで来て、そこからこの列車に乗った。ヨーロッパは地続きだから、本当に近くだ。私の住む町でも1000人単位での、避難民の受け入れが始まっている。

「避難民」という言葉自体が、差別的に感じる。皆2週間前には普通に学校に行き、仕事をして平和な毎日を送っていただけなのに。ラジオでは大切なヴァイオリンを手放して逃げてきた音楽家の話もあった。家にあったとっても大切なもの、積み上げてきたレンガの一つ一つに込められた、歴史と文化と愛情の全てが壊されること、一番弱い立場の妊婦さんや病気の人への攻撃、この経験のトラウマは計り知れない。

小さい頃、ロシアでビジネスをしていた叔父の関係で、マトリョーシカや、ロシアの小物に愛着があった。音楽だってアートや文学、スポーツだって素晴らしいロシアの文化と人達。誇り溢れるものと、お互いの尊厳と、お願いだからこれ以上破壊するのをやめてほしい、と毎日、一刻も早くこの戦争が終わることを願っている。平和なアムステルダムの西公園にて。

@ Westerpark, Amsterdam