’Life is a Dream’ 『人生は夢』続編

前回のブログでは、今年撮影した映画についてざっくりとお知らせいたしました。もっと撮影秘話に興味持ってくださる方、こちらも読んでみてください!

このタイトル『人生は夢』ですが、

これは映画の中でラストに使われているハイドンのドイツ語の歌曲 ‘Das Leben ist ein Traum’ の邦訳です。人生は泡のように儚く、いずれ消えてしまうもの。

解釈の難しい歌詞です。地上に浮遊するからっぽの泡。愛も戯れもいつか消えてしまう。名声を成しても最後に残るのは、墓標の名前のみー

この映画の中では、2箇所ドローンによる撮影がされています。

まさにこの曲の部分(約20’30)、そしてお話が終わってお城を引いていって撮影するところです。素人の私には出来上がりを見てすごい!の一言なのですが、よく見ていただくと、エドモンド君がちょうどこの歌詞を歌っています。(英語訳が選択できます)

「我々はこの世界に入り込み、漂う」 (We slip into the world and float)

そうです、歌手も橋の上で地面から離れ、水の上を漂うカメラは、子役の子供の目線、 夢の一部のようなシーンなのです。

photo: Chiel Meinema

この日、ちょうど風が吹いていました。風に揺れる木や草は、音楽とともに揺れているかのようで良いタイミングだったのですが、そうするとドローンカメラも、風でぐらついてしまうため、とても苦労していました。

この映画で使われた音楽は、演奏したフォルテピアノ(今回は形が四角のタイプで、特にスクエアピアノと呼ばれます)の時代と場所、1829年イギリス、をヒントに選曲されています。イギリスに行き来したメンデルスゾーン(フェリックスとファニー)とハイドン、このようなピアノを実際に弾いていた作曲家達です。

歌手のエドモンド君とキティちゃんの意見も伺いつつ、歌曲5曲、ピアノソロ3曲を演奏しました。

音楽プログラム

ピアノソロ

メンデルスゾーン作曲『無言歌』より Songs without Words

  • OP. 19 – 2 『後悔』(Regrets)
  • OP. 19 – 3 『狩りの歌』(Hunting Song)
  • OP. 19 – 6 『ヴェネツィアのゴンドラの唄』(Venetian Gondellied)

歌曲

  • メンデルスゾーン作曲 『ズライカ』Suleika
  • ハイドン作曲 『共感』Sympathy
  • メンデルスゾーン作曲 『ズライカとハーテム』Suleika und Hatem
  • ハイドン作曲 『見て!あなたがそれを見るでしょう』Guarda qui che lo vedrai
  • ハイドン作曲 『人生は夢だ』Das Leben ist ein Traum

(ピアノソロのタイトルは『ゴンドラの唄』以外は、後の人がつけた通称)


「音楽ビデオ」というのがメインの目的なので、監督のダーン・フレーは常に、’ Music first!’ ということを念頭にしていました。常に、ここどうする? → 熟考 → 結論 というプロセスの繰り返しです。子供がお城の中で見つからないように逃げて、隠れるシーンがあります。それを探そうとする、キティ。

photo: Minus Huynh

例えばここで彼女の階段を歩く足音を入れるかどうか。足音が音楽にかぶさるとどうなるか、音量が小さければ気にならないか、どの音楽をここに使うか。このシーンの撮影中は、足音を別のマイクで追ったわけではなく、カメラの中で入ってくる音のみです。足音を使用する場合は、もう一度録音するか、作るか、そういう音源を探すか。

ストーリーが流れるよう、音楽が流れるよう、常に熟考していました。

音楽と撮影環境という材料のみからインスピレーションを得てストーリーを展開し、フィクション映画を作りあげたのです。

イギリス、ドイツのロマンティックな歌詞に溢れる言葉の数々は、西風に託した恋人への想いや水のきらめき、戯れ、など自然描写も豊かです。イタリア語のデュエットではキューピッドが二人を結びつけるシンボルです。それらを映像化に試みる、とっても斬新的な映画なのではないかと思います。

‘ Nature or Culture ‘ 自然 か文化か、とよくフレー氏は言っています。

自然、とは元々そこにあったもの。

文化、とは後から人が造り上げたもの。

結果的には自然との一体感ある作品になっているのではないでしょうか。

この女の子役で出演しているのは、実は娘です。

photo: Kaoru
photo: Minus Huynh

馬の玩具で遊ぶのが大好きで、それはいつもの自然体のままです。それでも映画となると初めての経験で、大きなカメラが回る中、様々な要求に応え、よく頑張りました。主人は以前の映画 ‘ Aangenomen’ (adopted: 2012) で息子を子役として起用したので、今回は平等に娘にもチャンスを与えたというのもありますが、子供の目線、というものからインスピレーションをたくさん得ているのは確かです。

「この映画の全てを理解する必要はない」と監督のフレー氏は話します。

なぜ?と思う箇所もあるかもしれません。

なぜカンフー!?

と思われたかもしれません!

このカンフーをするヒーローがお姫様を助けてくれるかもしれない、、

photo: Minus Huynh

エドモンド君はカンフーでたくさんの賞を取っており、プロ並みの腕だそう。歌えてカンフーができて、演技力もある歌手。オペラもたくさん勉強したいそう。将来の活躍を期待しています!

長くなってしまいました!

ここで、本当に秘話だと思うのが、1年前には何もなかったのです。

コロナ禍になり、自宅でオンライン授業を受ける子どもたちや授業をする夫、その世話係になってしまった自分に落ち込みました。そこで、5分間のライブコンサートを思いつきました。その会場がこのお城でした。そのライブを見てくれた方は、何万もいません!100人ぐらいの視聴者の中に、香港のKarenがいてくれて、その映像と雰囲気が素敵、ということで今回の依頼をいただきました。そこからどんどんアイデアが発展していき、カレンも音楽祭で今年5本の映画をプロデュースしました。自分のできることを一つ一つ一生懸命やることが、大切なんだ、と改めて感じた出来事です。

美しい自然、お城、音楽、ロマンティックな恋、空に昇っていく目線。

全ては一つの夢。

香港古楽音楽祭のKaren Yeung、この夢の作品を作らせてくれて、ありがとう!

最後に、スタッフの紹介を。

2日間の撮影中に来てくれた写真家のMinus Huynh氏は、撮影現場の写真を撮ったり、私達のポートレートを撮りに来てくださいました。

現場の写真を綺麗に撮ってくださったおかげで、このブログも華やかになりました。ポートレートは、映画の最後の部分に使われていますがレンブラントの光と影を出すような奥行きのある写真を撮る方です。https://www.minus-huynh.com/index.html

完璧な光の差し具合を調整するのに、準備が入念でした。

編集の Elmer Leupen氏は素晴らしい経験と才能で、撮影したフィルム材料を使いこなし、美しい仕上がりへと導いてくれた映像の魔術師です!www.elmerleupen.nl

数々の素晴らしい録音を残されている録音技師のFrans de Rond氏、バッハ協会管弦楽団専属を始め、各種コンサートホール、コンクール等で幅広く活躍される調律師のEduard Bos氏、経験豊富なカメラマンで、以前スェーリンクコレクションでもお世話になったDeen van der Zaken氏、映画監督であり、カメラマンでもあるAndré Kloer氏、ピアノを提供してくださったGeelvinck Fortepiano Collection、ユトレヒト州Loenersloot お城のボランティアのチーム、美味しいランチを作ってくれた Aly’s Biologische catering、

皆さんにお世話になりました。今回は私はピアニストの役をもらった女優でした!

たくさんの方に見ていただけたら嬉しいです。

’Life is a Dream’ 『人生は夢』

‘ Life is a Dream’ (music film) 『人生は夢のよう』(音楽動画)

こんにちは。このブログを訪ねてくださってありがとうございます。

今回特に強調します。だって3年間もサボっていたのですから。

それでもご縁あり、ここを訪ねてきてくださったことに感謝します。私はおかげさまで今も元気にフォルテピアノを弾いています。

そしてこのパンデミック中にも、今年(2021年)は一つ音楽映画を作り上げました。このプロジェクトは第2回香港古楽音楽祭による打診で、オランダの雰囲気の伝わるお城で、スクエアピアノを使った音楽動画を作成してほしい、というものでした。最初のアイデアは、コンサートの録音。ライブでの音楽祭が難しくなりましたものね。

お城内での撮影現場 (写真:Minus Huynh)

主人が映画監督とシナリオ書きの経験があったことを覚えていてくれた、香港映画祭のダイレクター Karen Yeung さんが、撮影に関して、チーム作りと内容について夫のDaan Vreeに任せてくれました。

主人はクラシック音楽の世界には無縁ですが、子供の頃から常にクラシック(特にチェロの音楽)を聴いて育ち、普段の専門大学教師の仕事の合間に、この数年、幾つかの短編映画を撮影しています!

https://vimeo.com/268741859(例えばこちら Hangul Blues『ハングル・ブルース』)

今回、香港の映画祭ということで、香港出身の二人の若い歌手(Edmond Chu, Kitty Lai) と一緒に作ることに。デン・ハーグ音楽院にて勉強中の二人、香港のカレン、主人と私の最初のミーティングは、Zoomでした。少し緊張が漂う中、主人が何かストーリー性のあるものにしたいと提案しました。

出来上がった映画は、とてもユニークなものになりました!

  • フォルテピアノと音楽の良さを感じてもらいたい
  • セリフは少なく、歌の歌詞がストーリーの一部
  • お城の内外を魅せる
  • 周囲の自然の美しさ
  • 子供の目線から描かれている
  • 夢か現実か、、、ファンタジーと隣り合わせ
  • ドイツ語や英語の歌詞を広東語と英語字幕に訳す

撮影期間は経ったの二日間!!

音楽の録画は1日目の2時ぐらいまでに終わらせる、というハードスケジュールの中、タイムスケジュールは分刻みで組まれました。(スケジュール作成に費やす時間のなんと膨大な事)

主人の映画作りの周辺を何度か垣間見ていたので、いかに一つの映画作成が大変かは身に沁みています。大勢のスタッフや機材も必要です。

狂いやすいフォルテピアノのためにスタンバイしてくれるベテラン調律師さん。カメラマン、ライト、録音技師、写真家、タイムキーパー件雑用係 など、一人二役も三役こなすこともありました。

夫はストーリー、シナリオ作成、監督の他、プロダクションに関わる全ての仕事をこなし、大変ではあったけれど、信頼できるスタッフに快く協力してもらうことができ、それをチームにまとめていった力はすごいなあと尊敬します。

(写真:Minus Huynh)

お城のボランティアの方達の協力もなくてはできないものでした。ランチのケータリングも順調に。そして撮影終了後には編集の段階へと続きます。そして色の微調整、様々な方面とのコミュニケーション、翻訳、と長丁場です。といっても2月にミーティングして6月に撮影、7月に提出、10月に初演と、あっという間でした。

(下記写真全て:Minus Huynh)

これらの美しいセット写真が残っているのも、写真家のミヌスさん Minus Huynhが来て撮影の合間に撮ってくださったおかげです。

(写真:Minus Huynh)

いつかどこかで、小さな場所でも、映画祭で、試写会で、オンラインでなく、生の感想を聞かせてもらえる日が来ることを祈っています!

撮影中のエピソードをブログ続編で綴ってみたいと思います。

それでは、ぜひ映画をお楽しみください!!

ミュージアム・ナイト in アムステルダム

11月3日(土)は Museum N8 (Nacht – 夜)であった。

これは、アムステルダムの博物館(56館が参加)が夜7時から夜中の2時まで開き、様々な特別な催し物をやっている。毎年開かれ、一週間前にチケットは売り切れだったそう。

http://museumnacht.amsterdam

私はピアノラ博物館で、宣伝も兼ね、20分バージョンのマギーポディウム(9月13日のブログ参照)で2回参加させていただくことに。

 マギーポディウム(facebook いいね👍ボタンお願いします♪)

初演での反省点、隅々まで気が行き届かなかったオランダ語のセリフを初演よりはコンパクト、かつ正しくしようと、息子の前で練習してみると、直されるわ。。。9歳ともなると、オランダ語もきちんとしてきているようで、息子の話す程度の言葉遣いと文章の長さが、子供向けに話すのにはちょうど良い感じであった。

いつも日本語を教えようと、躍起になっている母の真剣さはのれんに腕押し。その代わりちゃんと学校で勉強しているオランダ語は、母の適当な文法で渡り歩いてきたものとは違うきちんとした響きがあり、頼もしく思う。

ミュージアムナイトのピアノラ博物館のところを事前チェックすると、LGBTQ 推薦マークが! レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クィア の略です。(はい、勉強になりました)

実は本番3日前に、「drag queen のグループの方たちとコラボするのどう思う?すごく美しくて、クラシックの歌曲を歌うの。」という電話があり、「はあ?グループ名?彼らのリンクを送ってくれますか?」などと無知な返事をしたところであった。

(もし私のようにこの言葉を知らない方のために。。。簡単に言うと男性で女装の方)

結局、持ち時間も短いし、コラボするのにリハーサルする時間もないので、自分のプログラムだけ集中するということに。

当日。なんと美しい女装集団が、楽器の調律を終えた頃、続々と到着。

香水がんがんの匂いの中、着替えとお化粧に忙しく、実は胸は毛むくじゃらだったり、ゴツゴツの足にストッキングで超高いハイヒール。。。デーモン閣下顔負けというか、仮想舞踏会の仮面というか、美しい厚化粧。10人近いグループでバックステージが賑わっていた。

「ハ、ハロー。すごい綺麗!」と挨拶してみる。

私のマギーポディウムと、ピアノラ博物館のカスパー・ヤンセンのでモンスレーションの合間に30分ほどのステージを夜中まで演奏していた。

公演を見に来た、自分の子供たちや甥っ子も彼らと写真撮ったり話したりして、、、アムステルダムのコアなところで育つと、こういう夜も5歳と9歳で経験することに。いいのかなあ?!どうなのかなあ?!

彼らのプログラムはまず最初ピアノラの伴奏で、マドンナのマテリアル・ガール合唱。そのあと、グループの一人が懐かしい、音大で必須であったイタリア歌曲集より数曲ソロで歌う。ピアニストの伴奏がとても音楽的で、前奏と後奏で癒される!

 

Vital Stahievitchさんのピアノソロもよかった。(ラフマニノフの前奏曲、スクリャビンのソナタなど)

この日に弾いたスタンリー・ホッホランド氏所有の18世紀のスクエアピアノは2度調律した。スクエアピアノのピンのところに手書きでa、b、c、、と音名があるがとても見にくく、年に2度も調律されるかどうかという状態なので弦が切れないようにすごく気を使ってそうっとピンを回してみる。

ここは味わいのある、アムステルダムらしい博物館で、ヨルダーン地区のお散歩ルートにオススメ!ピアノラミュージアム

 

 

 

ポールマンで現代曲

今日は、Pohlman というイギリスの18世紀のスクエアピアノで、この10月にスクエアピアノのために作曲してくれたオランダ人、Bastiaan Egberts氏の曲を録音した。

 

結局は静けさが保てそう、と賭けたこの部屋で。まるで物置。。。

マイク2本で、作曲した方が自ら録音してくださり、そのうちYouTubeにアップする予定でございます。

調律もしたし、今年最後の神経を使うお仕事だったので、終わった後は、気晴らしに久しぶりに街へショッピングに出かける。

 

あさって木曜日は、オランダ中の小中学校でクリスマス・ディナーがある。

昼頃学校終了し、夕方またディナーに学校に出かける。

その時に子供のうちから、きちんと晴れ着で参加。

食事は親が持ち寄る。飾り付けも親。そのための子供の洋服を見に行った。

街はクリスマスのイルミネーションと、プレゼントを買う人々で賑わっている。

今年もいよいよ終わりに近づいている。

 

 

マスタークラス

先日はまたレッスンの機会をいただいた。

おなじみのザーンダイクのオランダ製スクエアピアノ。

1830年製で、タッチにはコツがいる楽器。

 

ここは有名な観光地のザーンセ・スハンスの対岸にあり、オランダの絵のような緑のかわいいお家がザーン川沿いに立ち並ぶ、まさにミニチュアオランダ村のセットにいるような景色。でも実物!今回は電車が止まっていたので、バスに40分揺られてザーンセ・スハンスまで行き、観光客のために作られた風車と、古い緑の木造住宅などを建てたテーマパークの中を子供達を連れて通りぬけ、対岸のホーニヒ・ブレート・ハウスへそこから徒歩10分。

 

ホーニヒ・ブレート・ハウス(Honig Breethuis) のあるLagedijk 通りで12月17日の週末に音楽のお祭りがあった。

通りのお家で、家に(グランド)ピアノがあったり、開放してコンサートに提供できるいくつもの家があり、そこで地元の音楽家がハウスコンサートをしている。オランダ名物の冬のお菓子などの出店も出て、雰囲気も素敵だった。

そこで、ホーニヒ・ブレート・ハウスにある楽器を、地元の若い才能のある音楽家に演奏させてみよう、というアイデアが出て、このフォルテピアノの持ち主が、やたらと古い楽器の取り扱いを知らないピアニストに弾かせたくない、と話が進まなかったそうだ。そこで「カオル、レッスンしてやってくれないか」という話に。私が判断してオーケーが出た人にだけ、弾かせる、という厚い信頼を受け、地元音楽教室に通う、優秀な10代の子達と大人のピアニストの3人の演奏を聞かせてもらいにいくことになる。2度のレッスンでフォルテピアノへの導入と、ちょっとしたコツをアドバイスしながら、少しでも慣れることができるように、弾くのを見守る感じ。

 

うーん、また楽しくて嬉しかった。

16歳の女の子はチェロを弾く妹さんとブラームスのチェロソナタ ホ短調の1楽章を。

16歳でこのブラームスを妹さんと弾いている、素敵な姉妹!最低音のホ音が足りなくて、まずあせる、、、よね。さらにロマンティックに大きく表現豊かに弾いている妹さんとのバランスを取るのが難しい、、、、よね。作品よりも30年も古いピアノなのだから。

もう一人は12歳の男の子。同じくらいの歳の女の子のバイオリニストとシューベルトのソナタの1番、ニ長調1楽章。これはピアノとレパートリーがばっちり合う。ペダルの使い方、モダンピアノと大きく違うなあ、と実感。

彼はモーツァルトのソナタも弾く。楽器に刺激されたらしく、ドビュッシーやリストやいろんな曲を試してみていた。若い世代の柔らかな感性、吸収力はすばらしくて、とても楽しかったようだ。

 

普段18人ぐらいの生徒さんを持っているが、初心者から18歳ぐらいまであとは大人が3人なのだが、選抜クラスにいるような10代の子供達にレッスンするというのは、とてもやりがいのある機会であった。素直に私のいうことに耳を傾けてくれるひた向きな目に、きゅんとしてしまう。。。

ご両親もまた熱心で、温かく見守る姿にこれまでのサポートがあってこそ、こんな若い音楽家が育つんだなあとなぜか親心にも共鳴してしまう。

このチャンスが本当によかった、と私も生徒さんも、ご両親も、博物館の方達も、そして楽器の持ち主も、みんな幸せな気分になったフェスティバルとなった。

フォルテピアノを通してのご縁、ありがとう。

 

「冬の旅」への旅

シューベルト歌曲集「冬の旅」。

11月19日のシューベルトの220年の命日に自分の「冬の旅」デビューを果たした。

「冬の旅」の旅の第一歩を踏み出すことができたのも、いろいろなご縁とお声をかけてくださった方のお陰である。共演のGuy さんより、以前この本をプレゼントにいただいた。

 

普段英語の本を読み切る能力は???なのに、がんばってこれは読もうと張り切った。言葉も調べて読んでいるつもりだが、やはり自然科学や歴史、絵画、様々な分野の教養、知識、専門用語が多く、そう簡単に進まない。内容の濃さと興味で、読みたい気持ちはあるのだが、英語力がついていかない。。(汗)

 

そしてこの8月に東京のヤマハで日本語訳を発見!

今年の2月に日本で初版が出たばかりで、1年半眺めた英語版に見切りをつけ、即購入!

 

そしてなんとかコンサートの前までに読み、今後も繰り返し目を通そうと思う本である。

リート伴奏で大事なのはやはり、ドイツ語の意味の把握、音楽と言葉の抑揚の一体感を感じることなので、本を読むことが目的ではないのだが、でもボストリッジの演奏家としての経験と観察力から書かれる冬の旅の分析は、とても興味深く、彼の教養の幅広さと鋭さ、繊細さにはもうほれっぱなし。彼の演奏も本当に心に浸みいる。エモーションがダイレクトに伝わってきて、長年愛聴していたフィシャー=ディースカウとはまた違う新鮮な良さがある。

オランダのスクエアピアノ、1830年頃の楽器で、親密さと「スピーク」できる感覚がたまらなく、お客様にもとても喜んでいただくことができた。

リート伴奏は楽しい!24曲の構成、フォルテピアノでの演奏、テンポ構成、伴奏法、詩の意味、様々な観点から興味の尽きない作品である。Guyさんとの共演も続けていきたいが、一生のうちには両手指くらいのたくさんの歌手の方と「冬の旅」を勉強して、様々な声域でも機会があったら演奏してみたいなあ、と密かな目標を持っている。

 

お城でのコンサート

先週の昇天祭月曜日には、ユトレヒト近郊のルーナースロートというこじんまりしたお城で、年に一度のオープンデーに毎時間コンサート、というイベントで演奏させていただく機会をいただいた。

歴史的なお城の中での歴史的なテーブルピアノの演奏という、セッティングで雰囲気からすでに素敵。

 

お城は13世紀に建てられ、1985年に手放されるまで、そのご家族のお宅として使われていた。最後に住まわれた男爵夫人は離婚後、長年一人暮らしだったそう。一人で住むにはすごく大きい!!逸話によると、オイルヒーターの暖房がまだ完備でない頃、夫人は家の中で部屋から部屋へと自転車を乗り回していたそうだ。

オランダっぽい。。

 

15分のミニコンサートということもあり、子供連れも誘いやすく、来やすく早くも予約で一杯。

約60席の天井高めの壁画のあるお部屋に、絵のように治まったブロードウッドのテーブルピアノ(1829年製) 。

・・・と偶然の「ディズニー白雪姫」色スカート。(笑)

 

1時間おきに計6回弾き、360人ほどのお客様にブロードウッドの現役な音色を聞いていただくことができた。プログラムはシューベルトの即興曲から一曲は毎回、(3つのプログラムを用意)他にベートーヴェンのバガテルや、エリーゼのために、楽興の時3番など親しみやすい曲に。

 

子供達、おじいちゃん、おばあちゃん、お友達、生徒さん一家、知り合いの方達も来てくださり、喜んでいただいて、幸せな気持ちになった。幅広い層の方にフォルテピアノの音色を聞いていただけたことが何よりもの喜び。15分で3−5曲というのは、初めて見る、聴く音色には十分な時間である。

普段のコンサートについて考えさせられた。

クラシックって、本当に馴染みやすいのだろうか。敷居の高いプログラム、になっていないだろうか。場合によってプログラムの内容はとても大事。

今回のような場所で、フォルテピアノをたくさんの幅広い層の方に聞いていただけた、ということが自分の幸せ感につながっているのでは、と思う。もっとたくさんの方に素敵なヒストリカルピアノの音色を聞いてもらいたい。。。そういう使命感が達成されたのかもしれない。

 

 

お天気も最高で、広いお庭ではお城見学の後、皆が外で遊んだりお散歩を楽しめる。

 

 

使われていた食器も展示してあったが、オランダの1790年頃のこの地方のもので一枚数十万円の価値とか。ナチュラルな染料の色で、かわいらしい。

 

 

そうそう、驚いたのは、このお城の上の一角には子供連れ家族が住んでいる。それは、ふつーの人で、ユトレヒト市の現在のこのお城の所有である団体が、賃貸している。。。

この壁画の中の隠し扉からもそこに通じているそう。

お城入り口に面した二つの元馬小屋のうちの一つも、改装されて普通の住宅として住まわれている。それで収入になるし、ということ。この方達の住宅環境をまもるためにも、お城は日曜日は公開していない。現在は週に3回ほど、半日から一日だけ公開しているそうだ。

 

おみやげにお城の最後のお住まいだった男爵夫人のものという、100年以上前のコーヒーカップをいただいた。

 

ラ・コルデ・ヴィブランテ日本ツアー終了!


Flyer 20130815ちらし最終版ura for mail

シチリア出身のギタリスト、ダリオ・マカルーソ氏と共に3回の日本でのコンサートを行いました。浜松市の楽器博物館(10月26日)、牛久市エスカードホール(11月2日)、石岡市ギター文化館(11月3日)。

今回は私たちのCDのプレゼンテーションも兼ねて、苦労の末産み出したCDを携えての旅。たくさんの嬉しいコメントをいただいて、大成功のうちに終了となりました。

このコンサートに足を運んでくださった皆様、本当にありがとうございました!

それからこのコンサートの準備のために快くお手伝いをしてくださった、友人、知人には本当に感謝しています。

浜松ではオリジナルの1805年頃のトーマス・ラウド(クレメンティの名前が一緒にネームボードに)のイギリス製スクエアピアノ。

味わいのある軽やかな音色に、芯のある柔らかい音色のダリオのギターととてもよく融合しました。

Thomas Loud hamamatsu 2

Thomas loud hamamatsu 3

この花模様はクレメンティ社のピアノによく見られますね。共同に制作した楽器のようです。

Thomas loud Hamamatsu 2013

ある方からこんな感想をいただきました。ここに筆者の許可を得て掲載します。

『一昨日はとても素敵なコンサートを開いてくださり有難うございました。
フォルテピアノの色や形がとてもエスカードに似合っていて、扉をあけたら別のホールかと思いました。
それに、19世紀のピアノの音は、私が想像していたものより、ずっと響きに重みがあり、ものすごい存在感でした。
心配していた響きも、前のブロックのすぐ後ろ、つまり通路をはさんで一列目やや右寄りで聴いたのが功を奏しました。

フォルテピアノはまるでサラブレッドの毛並みのようでした。
静かな光に包まれて、たてがみをふさふささせながらゆっくりスローモーションで走っている。それも夢の中で。
そういう音です。

特に、ベートーヴェンの作品は、テーマが魔笛だったので、夢の中でモーツァルトが弾いているピアノを聴いているような気分でした。時には、ハープのようにも聞こえるその音色はギターとちょうどよいバランスを保ちながら、華やかに展開してゆきました。

テーマがよいと、こんな風にアレンジできるんだな、と感心しながら聴いていた部分があり、CDでも毎日気に入ってきいてます。

その他の曲も、モダンの楽器でやるより、即興的な部分が多いせいか、すごく自由に解き放たれた響きがあります。
ギターがメロディになると、甘くて哀しい恋愛映画をみているようです。

こんな素晴らしいデュオですから、いろいろ大変なことも多いとは思いますが、ぜひとも10年、15年と続けていってくださいね。

かおるさんのレクチャーがとても私は好きです。簡潔でいて、はじめての人にも興味をい抱かせるような話法です。いつか、ギターやフォルテピアノの楽器を部分的に写しながら、古楽器の世界へようこそ、という内容の短い映像を作ってくれると嬉しいです。ぜひ生徒たちにもみせてみたいです。』

Mさん、ファンタジー一杯の感想ありがとうございました!

牛久エスカードホールでは、地元での広告などを見て来てくださった方もおり100名を超える盛況となりました。古楽器には音響も良く、サイズも中ぐらいで利便性もありとてもよかったです。ショッピングセンターの最上階にこんなスペースがあると、普段着でふらっと音楽を楽しめるようになりそうです。今日は何かやってるかなあ、とお買い物帰りにちらっとのぞいてみるのもいいかもしれません。

ギター文化館は、さすがギター専用のホールとあり、素晴らしい音響スペースでした!!!木村館長も、フォルテピアノはここの音響に抜群でした、とのことでした。お客様が少なめだったのがとても残念でしたが、木目で天井の高い、チャペルのような素敵なスペース。フォルテピアノの音色の豊かさがよく聴き取れるホールだったのではないでしょうか。味わいあるパノルモギターの音色、ダリオのクリアーな音作りがフォルテピアノと対等にやりとりして、贅沢感、幸せ感の中で演奏することができました。

なおCDは次の場所で購入可能です。
東京古典楽器センター  tel: 03 3952 5515
http://www.guitarra.co.jp

ギター文化館 tel: 0299 46 2457
http://guitar-bunkakan.com

CDcover La Corde Vibrante

定価2300円(税込み)(送料込み2500円にて上記より郵送可能)
私のホームページからもお申し込みできます。
ご希望の方はメールでお知らせください♪
kaoruiwamura.info@gmail.com

コンサートの前日に茨城ラジオ放送に生出演しました。
コンサートについての紹介やどのようにフォルテピアノと出会ったかなどをお話しして、CDから数曲かけてくれました。

ハウプ・エマー氏作曲の新曲はたくさんの方より、「よかった」「この方は日本をよく知っている」「面白かった」というご意見をいただきました。

またいつかダリオ氏と日本での公演の機会がありますように。

スクエアピアノ・デー

アムステルダムで6月末から7月初めにかけて ‘Amsterdam Virtuosi 2011’ という室内楽フェスティバルが Geelvinck Hinlopen 博物館であり、6月25日の話になるが。。。。「スクエアピアノ・デー」というスクエアピアノに焦点を置いた日があった。なんてマニアックなお祭り、、、でもイギリスのフィンチコックス博物館などは、同じくスクエアピアノに焦点を置いた、もっと本格的な催し物を今年4月にしていた。

スクエアピアノとは:ドイツ語、オランダ語では tafelpiano (テーブルピアノ)と呼ばれる、一見テーブルのような長方形をした、ピアノ。

昨年からスェーリンク・コレクションというアムステルダムにあるフォルテピアノのコレクションの委員となり、そのコレクションの楽器が数台置かれているGeelvinck 博物館では何かとお手伝いをさせてもらっている。この日はコンクールの審査員と新曲発表のプレゼンテーションに参加。

まずはスクエアピアノの演奏コンクール。
第一回目の開催なので、出演者がいるのか?という心配があったが、4人のフォルテピアノの学生、または卒業生が参加。年齢制限もなく、演奏曲目も自由だったので趣味の方が来るかもしれない、、、と思いきや、専門に勉強した演奏者ばかりで、4人4様の選曲、楽器へのアプローチがあり、とても面白かった。
楽器は4台のスクエアピアノがあった。

審査員はほかに、ウィレム・ブロンズ氏、スタンリー・ホッホランド氏、ミヒャエル・ツァルカ氏。私にとってフォルテピアノのコンクールの審査員というのは、初めての経験だったので、審査のディスカッションはとても興味深かった。

私の中では、これは「フォルテピアノの」コンクールなので、普通のピアノとは違う古楽器に合うタッチで弾いて欲しいという気持ちがあった。そして、その楽器の音色をどう引き出せるか。音楽性、技術(ヴィルトゥオージティ)という点ももちろん大事で、その兼ね合いは、本当に難しいと思う。

初対面の審査員のミヒャエル・ツァルカさんが素晴らしい音楽家で、さらに自分の感覚ととても近く参加者についていろいろとお話できたことが、とても素晴らしい経験であった。

夜には、スクエアピアノのために新曲を作曲してもらう、という作曲家のためのコンクールがあった。8曲の応募作品があり、そのうちの6曲が演奏された。

その時のダイジェスト版はこちら。
youtube ‘square for future’ (composition concours)

女性作曲家二人が一位を分けた。

古楽器で演奏することの意味、なぜ普通のピアノでできるのにこの曲をわざわざ古楽器で、、、など様々なディスカッションは古楽の盛んなオランダでも行われる。

作曲コンクールは、そんな視点ではなく、作曲家が特定のこのスクエアピアノのために作品を作ろう、と思いその特性にあった音楽を作る。出来上がった作品は、特別な調律を要求するようなモダンピアノでは不可能なものであったり、お琴との組み合わせの音色などは、モダンピアノではまったく別の印象の作品になる。

楽器の「個性」を最大限に使って作品を書いてくれた作曲家に、ありがとう、、、と伝えたい。この楽器でしかできないことを、したよ、と。
存在する曲を演奏するのでなく、オートクチュールで新調されたドレスみたく、楽器にしっくりくる音楽がクリエイトされたことに感動した。

楽器の魅力を感じてこのフェスティバルの動機に賛同して、日夜準備し続けたオーガナイザー、スタッフ、作曲家、演奏家と皆の情熱と貢献に拍手、、、

来年もこのフェスティバルが開催され、たくさんの方にこの楽器の魅力を知っていただけたら、と思う。日本では見ることはもちろん、音色が聞けることというのは本当にまれであると思う。眠っているスクエアピアノが日本にあったら、ぜひ眠りから覚まして、その美しさをお披露目してもらいたいと思う。