この10月に自分がマスタークラスで教えるという機会をいただいた。
実はこのフェスティバルでマスタークラスの講師となるのは、オフィシャルには3年目。
でもマスタークラスって自分で生徒さん,連れてくるらしい。(人気の先生はそんな必要はないだろうけれど)
だから今年は少し自分でフェースブックや、知人の先生グループに宣伝をしてみた。
フライアーこんな感じで。
この夏、スウェーリンクコレクションのスペースにいくつかのフォルテピアノが増えていることに気づく。そしてよく見ると、1769年製のツンペのテーブルピアノが。
(Zumpe et Buntebart, London 1769 G – f3)
これはイギリスのフィンチコックス博物館に Richard & Katrina Burnett コレクションとしてあったツンペであった。10年ほど前にクレメンティ賞の受賞で訪れた際に、「これがヨハン・クリスチャン・バッハがリサイタルをした当時の楽器!」とそのスペシャルな、決して力強くはないが歴史の重みのある深い、柔らかい、そして細くはないイギリスっぽい音色に酔いしれ、いつかまた弾きにこれたらなあ、と夢に思っていた。その楽器がこちらにやってきた。
昨年フィンチコックスが閉館し、たくさんの楽器がオークションにかけられたが、Geelvinck Museum のオーナーがそこで購入したようだ。
1760年代のツンペで弾ける状態の楽器は、世界中に何台あるのだろうか。
5本の指にも満たないのでは、と察する。
これまでスウェーリンクコレクションの楽器の中で一番古いのは、1770年のPohlman (London)であった。それが昨年使用可能になっただけでも、感動していたのに、さらにツンペがやってきて、このスペースのテーブルピアノ部門は本当に充実している。
現在この場所は、スウェーリンク・コレクションに加え、ヘールフィンク博物館(Geelvinck Museum) の所有楽器も置かれるようになった。
ある資料によると、ツンペは1779年頃までの10年間ほぼ、同じモデルを製作していたそうだ。
マスタークラスではKursch (Berlin c.1830, EE – f3) というドイツ製のテーブルピアノも使われる予定。この楽器の最初の印象は、奥行きが狭く、横に長い!
アクションはイギリス式が入っているようだが、音色は美しいウィーン式グランドのような、軽く透明感のある音。修復したハイスさんによると、「調律が保たなくて、とても困っている」楽器。
音を一音鳴らしてみると、目に見えるほど弦が震える。
そこまで震えるのは、どうしてか。でもそれが狂う原因のようだ、とのこと。
タッチにものすごく気を使う。というのは、sf(スフォルツァート)やフォルテと思われる箇所で、すぐに「限界を超えた?!」と思うような音色が汚くなってしまうポイントがすぐに来る。
すぐに、というのは「こんなに力入れてない程度で、もう?」という感じ。
でもその限界が感じられないと、もっと力強い指でタッチをしても、ピアノは音を出す。
音が出てるから、満足、と思ってもピアノがものすごく狂っていたら、やはり無理な力で弾いていることになる。その加減を知るのが難しい楽器。
弱音も出せるので、少し一段階下のヴォリュームの耳で勉強するのが無難に思える。
ピアノがあげている悲鳴が聞こえるかどうか。
心より、聴くこと。楽器の心も聴いてあげること。
マスタークラスは、コンクールの参加者、フォルテピアノを勉強する学生、ピアノ科の学生、ピアノの教師が対象となっている。
今年が間に合わなくても、来年も参加させていただける可能性あると思うので(?)、貴重なチャンスを是非体験してみたいかたは、どうぞお問い合わせください。
ちなみに参加料、無料。
事前に試弾もできます。
今年は、コンクール開催中の会場でマスタークラスも行われるので、コンクールで使用される、5オクターブ(Zahler) と6オクターブ(Böhm) のグランド型のオリジナルも舞台にあり、それを弾いてもよいです。
現在3名ほどの申し込みがあるようで、とても楽しみにしています!