‘ Thin Air’

このタイトルから皆さんは何を思い浮かべますか?『薄い空気』?これは、2020年にカリオペ• ツパキ Calliope Tsoupakiさんというギリシア出身の女性作曲家が作曲した作品の名前です。コロナ禍中に、‘Festivals for compassion’ ( 共感するフェスティバル)と題し、Wonderfeel festival ワンダーフィールフェスティバルというオランダの野外音楽祭が、世界にまたがるオンラインの音楽リレーを企画しました。

https://festivalsforcompassion.com/info/

もっと元をたどると、オランダ人芸術家、Rini Hurkmansさんの「共感の旗」という作品からインスピレーションを得て、音楽の形にしていったのが先のフェスティバルだそうです。

Flag of Compassison by Rini Hurkmans

この旗を掲げて航行する船があったり、飾っているギャラリーがあったりします。共感する、意思表示ですね。

このアイデアを聞いた時に、素晴らしい!と思い、オンラインで世界の様々な場所で、この ‘Thin Air’という同じ作品を 思いを寄せて演奏する姿を「共感するフェスティバル」のサイトで見た時、自分も是非参加したい!と思いました。

そして、11月に演奏させていただいたエラート・フェスティバルで希望を伝えたところ、録画が実現し、現在先のサイトのタイムラインに自分も参加させていただいています。

ユーチューブではこちら。

’Thin Air ‘ by Calliope Tsoupaki

‘ Thin Air’ = 薄い空気

とすると、なんだかコロナの病で呼吸困難になって、酸素が足りないことも関係あるのかな?!と思えたりもして。邦訳、これというのが思いつかないまま、英語にしています。

でもこの言葉を探すと、なんとシェークスピアの詩の一節にある言葉でもありました。この11月のフェスティバルのプログラムでは、ベートーヴェンの『テンペスト』も一緒に演奏したので、シェークスピアからインスピレーションを得たと言われているこの曲とつながりが!?!

偶然だと思うのですが、びっくりしました。

Prospero’s speech. (from ‘Tempest’(written 1610/1611) William Shakespeare )

           Our revels now are ended: These our actors—,
           As I foretold you—, were all spirits and
           Are melted into air, into thin air;
           And, like the baseless fabric of this vision,
           The cloud-capp’d towers, the gorgeous palaces,
           The solemn temples, the great globe itself,
           Yea, all which it inherit, shall dissolve
           And, like this insubstantial pageant faded,
           Leave not a rack behind: we are such stuff
           As dreams are made on, and our little life
           Is rounded with a sleep. — The Tempest, Act 4, Scene 1

ちょっと難しすぎて(汗)、うまく説明できませんが、「精霊たちが空気に、薄い空気に溶けていく」と述べています。

『テンペスト』も、海の上のいかだに乗ったプロスペロと娘のミランダ、島に漂着して、生き延びて、そして魔法で嵐を起こしてリベンジ。。。 イメージ広がるお話です。

今回のこの ‘ Thin Air’ では自分なりの様々なイメージを膨らませて演奏しました。

オリエンタルなメロディーが聞こえてくるところは、世界中に空気を伝って東から西方へ音楽が広がっていく場面、(コロナも空気を介して伝わる 汗)エオリアンハープに触れる風、

精霊たちの天上の叫び、悲しみとともに吹く、墓場の優しい風。

最後、出だしより半音上で曲が終わるのが、何よりも温かく、そしてポジティブな前途を感じさせてくれる、と思いました。

生と死を身近に感じ、共感と、人との連帯、つながりをとても意識したコロナ時代。

この作品は声楽、ソロ楽器、どんな楽器編成でも演奏でき、誰でもダウンロードできます。

私が使ったのは、ギター、ハープ、ピアノ用楽譜。フォルテピアノは少しギターやハープに近い音色を持つと思います。是非機会があったら、演奏してみてくださいね。

こちら→ https://festivalsforcompassion.com/download/

「夜の魔女」プロジェクト

4月の27、28日とアムステルダムのオルゲルパークにて面白いプロジェクトに参加した。Huib Emmerの’Nachthexen’ とAnne La Bergeの’Lonely Stats’という2曲の新曲発表。

第2次大戦中のロシアとアメリカのパワフルな女性、というのがテーマ。

私はNachthexenのオルガンパートで参加。

この曲は、3人のオルガニスト、トロンボーン、コントラバス、フルート、ナレーション、ラップトップ(電子音楽)のために書かれた。

Nachthexen「夜の魔女」とは、第2次大戦中にロシアでは女性パイロットがおり、ドイツにたくさんの爆弾を落としたが、レーダーから逃れる飛行機に乗り、音もなく現れて消えて行くのでそう呼ばれていた。姿を消す薬を飲んでいるのだ、という噂まであったそうだ。3人のパイロットとこのストーリーにインスピレーションを得た作品。

Lonely Stats(寂しい統計)の方は、アメリカの女性にまつわる。同じく第2次大戦中、男性が戦争に行ってしまいアメリカの野球界が人手不足となる。その頃女性のプロ野球チームが発足。その選手達のことがもとになっている。作曲家のアンネいわく、「野球は三振やストライクの数、スコア、すべて統計であり、数で比較されている」作品は、Nachthexenと同じ楽器編成で、オルガンは一人。コンピューターがサインを出したら、インプロヴィゼーションを始めたり、決まったフレーズを演奏したりする。’guided improvisation’ と呼んでいた。

オルゲルパークで、生まれて初めて、コンピュータつきのオルガンを見た!

実は、ハンスさんという方が、発明して作った世界にひとつの楽器だそうだ。

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楽器はホールの大きなパイプオルガンのパイプが共用されて鳴るので、音色は生のオルガンのまま。

私は19世紀後半のタイプの小型のパイプオルガンでホッとした。ストップのところに陶器の材質が使われていて素敵だった。モニターで指揮者を見る。

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ロシアの軍事ニュース関係の(?)テレビ局で翌日このコンサートのことが放映された。

http://tvzvezda.ru/schedule/programs/content/201005071133-4zo9.htm/201304291026-q4xl.htm

約8分45秒のところ。

タイプの違うパイプオルガンが四方の壁に設置され、とても贅沢感のあるホール!昔教会であったところを改装して建てられている。アムステルダムの中心地フォンデルパークに接する。