‘ Thin Air’

このタイトルから皆さんは何を思い浮かべますか?『薄い空気』?これは、2020年にCalliope Tsoupakiさんというギリシア出身の女性作曲家が作曲した作品の名前です。コロナ禍中に、‘Festivals for compassion’ ( 共感するフェスティバル)と題し、Wonderfeel festival ワンダーフィールフェスティバルというオランダの野外音楽祭が、世界にまたがるオンラインの音楽リレーを企画しました。

https://festivalsforcompassion.com/info/

もっと元をたどると、オランダ人芸術家、Rini Hurkmansさんの「共感の旗」という作品からインスピレーションを得て、音楽の形にしていったのが先のフェスティバルだそうです。

Flag of Compassison by Rini Hurkmans

この旗を掲げて航行する船があったり、飾っているギャラリーがあったりします。共感する、意思表示ですね。

このアイデアを聞いた時に、素晴らしい!と思い、オンラインで世界の様々な場所で、この ‘Thin Air’という同じ作品を 思いを寄せて演奏する姿を「共感するフェスティバル」のサイトで見た時、自分も是非参加したい!と思いました。

そして、11月に演奏させていただいたエラート・フェスティバルで希望を伝えたところ、録画が実現し、現在先のサイトのタイムラインに自分も参加させていただいています。

ユーチューブではこちら。

’Thin Air ‘ by Calliope Tsoupaki

‘ Thin Air’ = 薄い空気

とすると、なんだかコロナの病で呼吸困難になって、酸素が足りないことも関係あるのかな?!と思えたりもして。邦訳、これというのが思いつかないまま、英語にしています。

でもこの言葉を探すと、なんとシェークスピアの詩の一節にある言葉でもありました。この11月のフェスティバルのプログラムでは、ベートーヴェンの『テンペスト』も一緒に演奏したので、シェークスピアからインスピレーションを得たと言われているこの曲とつながりが!?!

偶然だと思うのですが、びっくりしました。

Prospero’s speech. (from ‘Tempest’(written 1610/1611) William Shakespeare )

           Our revels now are ended: These our actors—,
           As I foretold you—, were all spirits and
           Are melted into air, into thin air;
           And, like the baseless fabric of this vision,
           The cloud-capp’d towers, the gorgeous palaces,
           The solemn temples, the great globe itself,
           Yea, all which it inherit, shall dissolve
           And, like this insubstantial pageant faded,
           Leave not a rack behind: we are such stuff
           As dreams are made on, and our little life
           Is rounded with a sleep. — The Tempest, Act 4, Scene 1

ちょっと難しすぎて(汗)、うまく説明できませんが、「精霊たちが空気に、薄い空気に溶けていく」と述べています。

『テンペスト』も、海の上のいかだに乗ったプロスペロと娘のミランダ、島に漂着して、生き延びて、そして魔法で嵐を起こしてリベンジ。。。 イメージ広がるお話です。

今回のこの ‘ Thin Air’ では自分なりの様々なイメージを膨らませて演奏しました。

オリエンタルなメロディーが聞こえてくるところは、世界中に空気を伝って東から西方へ音楽が広がっていく場面、(コロナも空気を介して伝わる 汗)エオリアンハープに触れる風、

精霊たちの天上の叫び、悲しみとともに吹く、墓場の優しい風。

最後、出だしより半音上で曲が終わるのが、何よりも温かく、そしてポジティブな前途を感じさせてくれる、と思いました。

生と死を身近に感じ、共感と、人との連帯、つながりをとても意識したコロナ時代。

この作品は声楽、ソロ楽器、どんな楽器編成でも演奏でき、誰でもダウンロードできます。

私が使ったのは、ギター、ハープ、ピアノ用楽譜。フォルテピアノは少しギターやハープに近い音色を持つと思います。是非機会があったら、演奏してみてくださいね。

こちら→ https://festivalsforcompassion.com/download/

’Life is a Dream’ 『人生は夢』

‘ Life is a Dream’ (music film) 『人生は夢のよう』(音楽動画)

こんにちは。このブログを訪ねてくださってありがとうございます。

今回特に強調します。だって3年間もサボっていたのですから。

それでもご縁あり、ここを訪ねてきてくださったことに感謝します。私はおかげさまで今も元気にフォルテピアノを弾いています。

そしてこのパンデミック中にも、今年(2021年)は一つ音楽映画を作り上げました。このプロジェクトは第2回香港古楽音楽祭による打診で、オランダの雰囲気の伝わるお城で、スクエアピアノを使った音楽動画を作成してほしい、というものでした。最初のアイデアは、コンサートの録音。ライブでの音楽祭が難しくなりましたものね。

お城内での撮影現場 (写真:Minus Huynh)

主人が映画監督とシナリオ書きの経験があったことを覚えていてくれた、香港映画祭のダイレクター Karen Yeung さんが、撮影に関して、チーム作りと内容について夫のDaan Vreeに任せてくれました。

主人はクラシック音楽の世界には無縁ですが、子供の頃から常にクラシック(特にチェロの音楽)を聴いて育ち、普段の専門大学教師の仕事の合間に、この数年、幾つかの短編映画を撮影しています!

https://vimeo.com/268741859(例えばこちら Hangul Blues『ハングル・ブルース』)

今回、香港の映画祭ということで、香港出身の二人の若い歌手(Edmond Chu, Kitty Lai) と一緒に作ることに。デン・ハーグ音楽院にて勉強中の二人、香港のカレン、主人と私の最初のミーティングは、Zoomでした。少し緊張が漂う中、主人が何かストーリー性のあるものにしたいと提案しました。

出来上がった映画は、とてもユニークなものになりました!

  • フォルテピアノと音楽の良さを感じてもらいたい
  • セリフは少なく、歌の歌詞がストーリーの一部
  • お城の内外を魅せる
  • 周囲の自然の美しさ
  • 子供の目線から描かれている
  • 夢か現実か、、、ファンタジーと隣り合わせ
  • ドイツ語や英語の歌詞を広東語と英語字幕に訳す

撮影期間は経ったの二日間!!

音楽の録画は1日目の2時ぐらいまでに終わらせる、というハードスケジュールの中、タイムスケジュールは分刻みで組まれました。(スケジュール作成に費やす時間のなんと膨大な事)

主人の映画作りの周辺を何度か垣間見ていたので、いかに一つの映画作成が大変かは身に沁みています。大勢のスタッフや機材も必要です。

狂いやすいフォルテピアノのためにスタンバイしてくれるベテラン調律師さん。カメラマン、ライト、録音技師、写真家、タイムキーパー件雑用係 など、一人二役も三役こなすこともありました。

夫はストーリー、シナリオ作成、監督の他、プロダクションに関わる全ての仕事をこなし、大変ではあったけれど、信頼できるスタッフに快く協力してもらうことができ、それをチームにまとめていった力はすごいなあと尊敬します。

(写真:Minus Huynh)

お城のボランティアの方達の協力もなくてはできないものでした。ランチのケータリングも順調に。そして撮影終了後には編集の段階へと続きます。そして色の微調整、様々な方面とのコミュニケーション、翻訳、と長丁場です。といっても2月にミーティングして6月に撮影、7月に提出、10月に初演と、あっという間でした。

(下記写真全て:Minus Huynh)

これらの美しいセット写真が残っているのも、写真家のミヌスさん Minus Huynhが来て撮影の合間に撮ってくださったおかげです。

(写真:Minus Huynh)

いつかどこかで、小さな場所でも、映画祭で、試写会で、オンラインでなく、生の感想を聞かせてもらえる日が来ることを祈っています!

撮影中のエピソードをブログ続編で綴ってみたいと思います。

それでは、ぜひ映画をお楽しみください!!

エラールのピアノが来た

また巡り合わせというのか、素晴らしいエラールのグランドピアノ(1915年製)が私のスタジオに1年間来ることになった。

なんと美しい木目、タッチもなんとも言えないヒストリカルなピアノの感覚。

もっとモダンピアノの音色を想像していたが、低音もアーティキュレーションが聞きやすい、ピュアな音色。弦もハンマーヘッドもオリジナル。

チェンバロ製作家として知られる、ヨープ・クリンクハマー氏がここ数年フォルテピアノ、特にエラールにはまり、何台か修復の監督を手がけた。

コンサートも企画されたが、結局今は場所もとるので、売りに出すことも考えていたようだ。

売れるまで、とりあえずどこかに置かせてもらいたいということだったので、お話してみたら、トントン拍子で話がすすみ、

スペースのある私のスタジオに。

そのお話を聞いたのも、ひょんなことからで、そのご縁をもたらしてくれた方にも感謝。

 

私にとって、オランダで身近に置けるはじめてのグランドピアノ。

(シュタインモデルの18世紀レプリカの楽器をそう呼ぶ気がしないので)

ピアノの先生としても、普通の小さいピアノしかなかったので本当にありがたい。

私だけでなく、生徒さんにとっても恩恵が受けられ、子供達もグランドピアノの音色とその目前から香り立つ豊かな音色に、大きなインパクトを受けているように見える。

なんたって、グランドピアノ。

ヒストリカルな平行弦最後の時代のエラール。

たくさん練習したい!

 

ポールマンで現代曲

今日は、Pohlman というイギリスの18世紀のスクエアピアノで、この10月にスクエアピアノのために作曲してくれたオランダ人、Bastiaan Egberts氏の曲を録音した。

 

結局は静けさが保てそう、と賭けたこの部屋で。まるで物置。。。

マイク2本で、作曲した方が自ら録音してくださり、そのうちYouTubeにアップする予定でございます。

調律もしたし、今年最後の神経を使うお仕事だったので、終わった後は、気晴らしに久しぶりに街へショッピングに出かける。

 

あさって木曜日は、オランダ中の小中学校でクリスマス・ディナーがある。

昼頃学校終了し、夕方またディナーに学校に出かける。

その時に子供のうちから、きちんと晴れ着で参加。

食事は親が持ち寄る。飾り付けも親。そのための子供の洋服を見に行った。

街はクリスマスのイルミネーションと、プレゼントを買う人々で賑わっている。

今年もいよいよ終わりに近づいている。

 

 

マスタークラス

先日はまたレッスンの機会をいただいた。

おなじみのザーンダイクのオランダ製スクエアピアノ。

1830年製で、タッチにはコツがいる楽器。

 

ここは有名な観光地のザーンセ・スハンスの対岸にあり、オランダの絵のような緑のかわいいお家がザーン川沿いに立ち並ぶ、まさにミニチュアオランダ村のセットにいるような景色。でも実物!今回は電車が止まっていたので、バスに40分揺られてザーンセ・スハンスまで行き、観光客のために作られた風車と、古い緑の木造住宅などを建てたテーマパークの中を子供達を連れて通りぬけ、対岸のホーニヒ・ブレート・ハウスへそこから徒歩10分。

 

ホーニヒ・ブレート・ハウス(Honig Breethuis) のあるLagedijk 通りで12月17日の週末に音楽のお祭りがあった。

通りのお家で、家に(グランド)ピアノがあったり、開放してコンサートに提供できるいくつもの家があり、そこで地元の音楽家がハウスコンサートをしている。オランダ名物の冬のお菓子などの出店も出て、雰囲気も素敵だった。

そこで、ホーニヒ・ブレート・ハウスにある楽器を、地元の若い才能のある音楽家に演奏させてみよう、というアイデアが出て、このフォルテピアノの持ち主が、やたらと古い楽器の取り扱いを知らないピアニストに弾かせたくない、と話が進まなかったそうだ。そこで「カオル、レッスンしてやってくれないか」という話に。私が判断してオーケーが出た人にだけ、弾かせる、という厚い信頼を受け、地元音楽教室に通う、優秀な10代の子達と大人のピアニストの3人の演奏を聞かせてもらいにいくことになる。2度のレッスンでフォルテピアノへの導入と、ちょっとしたコツをアドバイスしながら、少しでも慣れることができるように、弾くのを見守る感じ。

 

うーん、また楽しくて嬉しかった。

16歳の女の子はチェロを弾く妹さんとブラームスのチェロソナタ ホ短調の1楽章を。

16歳でこのブラームスを妹さんと弾いている、素敵な姉妹!最低音のホ音が足りなくて、まずあせる、、、よね。さらにロマンティックに大きく表現豊かに弾いている妹さんとのバランスを取るのが難しい、、、、よね。作品よりも30年も古いピアノなのだから。

もう一人は12歳の男の子。同じくらいの歳の女の子のバイオリニストとシューベルトのソナタの1番、ニ長調1楽章。これはピアノとレパートリーがばっちり合う。ペダルの使い方、モダンピアノと大きく違うなあ、と実感。

彼はモーツァルトのソナタも弾く。楽器に刺激されたらしく、ドビュッシーやリストやいろんな曲を試してみていた。若い世代の柔らかな感性、吸収力はすばらしくて、とても楽しかったようだ。

 

普段18人ぐらいの生徒さんを持っているが、初心者から18歳ぐらいまであとは大人が3人なのだが、選抜クラスにいるような10代の子供達にレッスンするというのは、とてもやりがいのある機会であった。素直に私のいうことに耳を傾けてくれるひた向きな目に、きゅんとしてしまう。。。

ご両親もまた熱心で、温かく見守る姿にこれまでのサポートがあってこそ、こんな若い音楽家が育つんだなあとなぜか親心にも共鳴してしまう。

このチャンスが本当によかった、と私も生徒さんも、ご両親も、博物館の方達も、そして楽器の持ち主も、みんな幸せな気分になったフェスティバルとなった。

フォルテピアノを通してのご縁、ありがとう。

 

「冬の旅」への旅

シューベルト歌曲集「冬の旅」。

11月19日のシューベルトの220年の命日に自分の「冬の旅」デビューを果たした。

「冬の旅」の旅の第一歩を踏み出すことができたのも、いろいろなご縁とお声をかけてくださった方のお陰である。共演のGuy さんより、以前この本をプレゼントにいただいた。

 

普段英語の本を読み切る能力は???なのに、がんばってこれは読もうと張り切った。言葉も調べて読んでいるつもりだが、やはり自然科学や歴史、絵画、様々な分野の教養、知識、専門用語が多く、そう簡単に進まない。内容の濃さと興味で、読みたい気持ちはあるのだが、英語力がついていかない。。(汗)

 

そしてこの8月に東京のヤマハで日本語訳を発見!

今年の2月に日本で初版が出たばかりで、1年半眺めた英語版に見切りをつけ、即購入!

 

そしてなんとかコンサートの前までに読み、今後も繰り返し目を通そうと思う本である。

リート伴奏で大事なのはやはり、ドイツ語の意味の把握、音楽と言葉の抑揚の一体感を感じることなので、本を読むことが目的ではないのだが、でもボストリッジの演奏家としての経験と観察力から書かれる冬の旅の分析は、とても興味深く、彼の教養の幅広さと鋭さ、繊細さにはもうほれっぱなし。彼の演奏も本当に心に浸みいる。エモーションがダイレクトに伝わってきて、長年愛聴していたフィシャー=ディースカウとはまた違う新鮮な良さがある。

オランダのスクエアピアノ、1830年頃の楽器で、親密さと「スピーク」できる感覚がたまらなく、お客様にもとても喜んでいただくことができた。

リート伴奏は楽しい!24曲の構成、フォルテピアノでの演奏、テンポ構成、伴奏法、詩の意味、様々な観点から興味の尽きない作品である。Guyさんとの共演も続けていきたいが、一生のうちには両手指くらいのたくさんの歌手の方と「冬の旅」を勉強して、様々な声域でも機会があったら演奏してみたいなあ、と密かな目標を持っている。

 

お城でのコンサート

先週の昇天祭月曜日には、ユトレヒト近郊のルーナースロートというこじんまりしたお城で、年に一度のオープンデーに毎時間コンサート、というイベントで演奏させていただく機会をいただいた。

歴史的なお城の中での歴史的なテーブルピアノの演奏という、セッティングで雰囲気からすでに素敵。

 

お城は13世紀に建てられ、1985年に手放されるまで、そのご家族のお宅として使われていた。最後に住まわれた男爵夫人は離婚後、長年一人暮らしだったそう。一人で住むにはすごく大きい!!逸話によると、オイルヒーターの暖房がまだ完備でない頃、夫人は家の中で部屋から部屋へと自転車を乗り回していたそうだ。

オランダっぽい。。

 

15分のミニコンサートということもあり、子供連れも誘いやすく、来やすく早くも予約で一杯。

約60席の天井高めの壁画のあるお部屋に、絵のように治まったブロードウッドのテーブルピアノ(1829年製) 。

・・・と偶然の「ディズニー白雪姫」色スカート。(笑)

 

1時間おきに計6回弾き、360人ほどのお客様にブロードウッドの現役な音色を聞いていただくことができた。プログラムはシューベルトの即興曲から一曲は毎回、(3つのプログラムを用意)他にベートーヴェンのバガテルや、エリーゼのために、楽興の時3番など親しみやすい曲に。

 

子供達、おじいちゃん、おばあちゃん、お友達、生徒さん一家、知り合いの方達も来てくださり、喜んでいただいて、幸せな気持ちになった。幅広い層の方にフォルテピアノの音色を聞いていただけたことが何よりもの喜び。15分で3−5曲というのは、初めて見る、聴く音色には十分な時間である。

普段のコンサートについて考えさせられた。

クラシックって、本当に馴染みやすいのだろうか。敷居の高いプログラム、になっていないだろうか。場合によってプログラムの内容はとても大事。

今回のような場所で、フォルテピアノをたくさんの幅広い層の方に聞いていただけた、ということが自分の幸せ感につながっているのでは、と思う。もっとたくさんの方に素敵なヒストリカルピアノの音色を聞いてもらいたい。。。そういう使命感が達成されたのかもしれない。

 

 

お天気も最高で、広いお庭ではお城見学の後、皆が外で遊んだりお散歩を楽しめる。

 

 

使われていた食器も展示してあったが、オランダの1790年頃のこの地方のもので一枚数十万円の価値とか。ナチュラルな染料の色で、かわいらしい。

 

 

そうそう、驚いたのは、このお城の上の一角には子供連れ家族が住んでいる。それは、ふつーの人で、ユトレヒト市の現在のこのお城の所有である団体が、賃貸している。。。

この壁画の中の隠し扉からもそこに通じているそう。

お城入り口に面した二つの元馬小屋のうちの一つも、改装されて普通の住宅として住まわれている。それで収入になるし、ということ。この方達の住宅環境をまもるためにも、お城は日曜日は公開していない。現在は週に3回ほど、半日から一日だけ公開しているそうだ。

 

おみやげにお城の最後のお住まいだった男爵夫人のものという、100年以上前のコーヒーカップをいただいた。

 

マスタークラス終了

先日のマスタークラスはとても楽しく、学びの多い時間でした。

4人の生徒さんが私のレッスンを受講してくれました。

二人はドイツで初期鍵盤楽器を勉強中の学生さんで、コンクールを受けに来た方。あとひとりはオランダ在住のピアノの先生と、15歳のオランダ人の男の子。

ほぼ皆、Zumpe のスクエアピアノを体験し、一緒に解釈や奏法を試し、その楽器にあう演奏を模索しました。この楽器はグランド型よりどちらかというとクラヴィコードに似ています。

何が似ているかというと、強弱感のリミットがあること、タッチが弦を押す,という部分は似ているが、シングルアクションのスクエアピアノではとてもハンマーが振られてたたいているような感覚までは満たないこと。アーティキュレーションが大事なこと、などなど。

 

ほとんど皆さんがこの楽器、またはオリジナルのウィーン式ピアノZahlerでハイドンの作品を演奏され、他にはデュセックやクーラウの作品があがりました。

この楽器、楽しい!と思ってくださった生徒さんがほとんどでしたが、普段どこで練習できるの?という質問には「うーん」となってしまいます。弾ける状態の楽器があるだけで、貴重ですよね。

ましてやコレクターでない限り、家にこの時代の楽器がある学生さんもいません。クラヴィコードやフォルテピアノ、チェンバロの経験はこの楽器を弾くのに役立ちますが、でもこうして滞在期間中の練習とレッスン,という少ない機会でもそれを体験することによって、インスピレーションを得られることでしょう!

自分はなんて贅沢な環境にいるのだ、と思います。

 

私にとっては3度目のマスタークラス体験でしたが、(前にユトレヒトとフィンランドのクオピオで何人かフォルテピアノやチェンバロのレッスンしました。)さらに良い指導ができるよう、精進したいと思います。時間が限られ、一期一会でも音楽を共有して、クリエイティブな刺激を与え,与えられることが楽しいです。

 

また来年も予定していますので、日本からもどうぞご参加ください。
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フォルテピアノのマスタークラス

この10月に自分がマスタークラスで教えるという機会をいただいた。

実はこのフェスティバルでマスタークラスの講師となるのは、オフィシャルには3年目。

でもマスタークラスって自分で生徒さん,連れてくるらしい。(人気の先生はそんな必要はないだろうけれど)

だから今年は少し自分でフェースブックや、知人の先生グループに宣伝をしてみた。

フライアーこんな感じで。

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この夏、スウェーリンクコレクションのスペースにいくつかのフォルテピアノが増えていることに気づく。そしてよく見ると、1769年製のツンペのテーブルピアノが。

(Zumpe et Buntebart, London 1769 G – f3)

 

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これはイギリスのフィンチコックス博物館に Richard & Katrina Burnett コレクションとしてあったツンペであった。10年ほど前にクレメンティ賞の受賞で訪れた際に、「これがヨハン・クリスチャン・バッハがリサイタルをした当時の楽器!」とそのスペシャルな、決して力強くはないが歴史の重みのある深い、柔らかい、そして細くはないイギリスっぽい音色に酔いしれ、いつかまた弾きにこれたらなあ、と夢に思っていた。その楽器がこちらにやってきた。

昨年フィンチコックスが閉館し、たくさんの楽器がオークションにかけられたが、Geelvinck Museum のオーナーがそこで購入したようだ。

1760年代のツンペで弾ける状態の楽器は、世界中に何台あるのだろうか。

5本の指にも満たないのでは、と察する。

これまでスウェーリンクコレクションの楽器の中で一番古いのは、1770年のPohlman (London)であった。それが昨年使用可能になっただけでも、感動していたのに、さらにツンペがやってきて、このスペースのテーブルピアノ部門は本当に充実している。

現在この場所は、スウェーリンク・コレクションに加え、ヘールフィンク博物館(Geelvinck Museum) の所有楽器も置かれるようになった。

ある資料によると、ツンペは1779年頃までの10年間ほぼ、同じモデルを製作していたそうだ。

 

マスタークラスではKursch (Berlin c.1830, EE – f3) というドイツ製のテーブルピアノも使われる予定。この楽器の最初の印象は、奥行きが狭く、横に長い!

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アクションはイギリス式が入っているようだが、音色は美しいウィーン式グランドのような、軽く透明感のある音。修復したハイスさんによると、「調律が保たなくて、とても困っている」楽器。

音を一音鳴らしてみると、目に見えるほど弦が震える。

そこまで震えるのは、どうしてか。でもそれが狂う原因のようだ、とのこと。

タッチにものすごく気を使う。というのは、sf(スフォルツァート)やフォルテと思われる箇所で、すぐに「限界を超えた?!」と思うような音色が汚くなってしまうポイントがすぐに来る。

すぐに、というのは「こんなに力入れてない程度で、もう?」という感じ。

でもその限界が感じられないと、もっと力強い指でタッチをしても、ピアノは音を出す。

音が出てるから、満足、と思ってもピアノがものすごく狂っていたら、やはり無理な力で弾いていることになる。その加減を知るのが難しい楽器。

弱音も出せるので、少し一段階下のヴォリュームの耳で勉強するのが無難に思える。

ピアノがあげている悲鳴が聞こえるかどうか。

心より、聴くこと。楽器の心も聴いてあげること。

 

マスタークラスは、コンクールの参加者、フォルテピアノを勉強する学生、ピアノ科の学生、ピアノの教師が対象となっている。

今年が間に合わなくても、来年も参加させていただける可能性あると思うので(?)、貴重なチャンスを是非体験してみたいかたは、どうぞお問い合わせください。

ちなみに参加料、無料。

事前に試弾もできます。

 

今年は、コンクール開催中の会場でマスタークラスも行われるので、コンクールで使用される、5オクターブ(Zahler) と6オクターブ(Böhm) のグランド型のオリジナルも舞台にあり、それを弾いてもよいです。

現在3名ほどの申し込みがあるようで、とても楽しみにしています!

 

 

 

 

 

 

カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ生誕300年

今年はバッハの息子達の中でも最も才能があったと思われるカール・フィリップ・エマヌエル・バッハの生誕300年にあたる。

6月に小さな会場でそれにちなんだリサイタルを開いた。

タイトルは’ Bach & Bach’ .

バッハが好き、という音楽愛好家は多いがほとんどがヨハン・セバスチァン・バッハの父のほうを指すだろう。やはりカール・フィリップだけではお客さんが来てくれそうにもない。だから父と息子の音楽を比べて聴ける企画にした。

フォルテピアノで主にカール・フィリップ、17世紀イギリスモデルのスピネットで父バッハを演奏。

プログラムはカール・フィリップの「識者と愛好家のための曲集」よりロンドやソナタ2曲、そして「フォリアの主題による変奏曲」、「幻想曲ーカール・フィリップ・エマヌエル・バッハの心情」。

父バッハはフランス組曲の第5番よりアルマンド、クーラント、サラバンド、ジーグ、インベンションとシンフォニアよりニ短調、ニ長調、ヘ長調、ヘ短調を並べて演奏した。

カール・フィリップはオリジナルのZahlerというチェコのフォルテピアノ(5オクターブ半)が繊細な心情を表すのに頼もしい私の相棒となってくれた。強弱の差が出せるフォルテピアノとチェンバロのひとまわりヴォリュームの小さいようなスピネットと比べる場合、どんな競争になるかと思いきや、どちらの良さも返って引き立ったようで、どちらもよかったという感想をたくさんいただいた。

音楽としては、カール・フィリップの方が良い作曲家、聴いていて面白いね、という意見も。。。

どちらにも同じタイトルの作品を選ぼうと最初は考えがあったのだが、それが面白いことにほとんどないことがわかった。まさに父の音楽の趣味に反抗していたのだろうか?!

カール・フィリップには組曲、「プレリュード&フーガ」の組み合わせもほとんどないし、カール・フィリップに多い「ロンド」、「ソナタ」は父バッハにほとんどない。(ヴァイオリンのソナタは有名)父バッハは「ファンタジー」と名のつくものは意外と少なく、オルガン曲に少しあるのと、有名な「半音階的ファンタジーとフーガ」などである。スピネットでその曲を試しに練習していたが、今ひとつ迫力に欠ける。

スピネットは豊かな音色が出るが、やはりボディーが小さいため、2段鍵盤のチェンバロにはかなわない。私は常々、それぞれの楽器には「サイズ」があると思っている。

サイズの合わない洋服を着るとその人の良さが出ないのと同じく、作品のサイズと楽器のサイズもマッチしないと、しっくりこない。今回「半音階的ファンタジーとフーガ」をスピネットで演奏したら、スピネットって物足りない楽器だね、この曲って今ひとつな曲? という楽器にも曲にも残念な感想が出かねないのだ。

インヴェンションとシンフォニア、聴きやすく声部の少ないフランス組曲はとても良く楽器が鳴ってくれたと思っている。曲がシンプルで音が少なくても、作曲家の素晴らしさはそのままである。ヘ短調のシンフォニアのなんと深みのある内容。

 

この日のコンサートの落ちは、ちょうどサッカーのワールドカップでオランダが試合する日で、ちょうどコンサートの時間と同じ!控え室の窓から見えるアムステルダムの通りのカフェはオレンジ色でいっぱいで皆、大きな画面を見ている。

サッカーだから来ないというお客様はもちろんいた。(生徒さんの家族一家も:))

来てくれた音楽好きのお客様達には楽しんでいただけたようで、良いコンサートとなった。会場のピアノラ博物館のバーでは、コンサートの終了後、壁にかかった古い大きなオルゴールを当時のコインを入れてまわしてくれた。とても豊かな響きをワインとともに最後まで残っていたお客様数人と堪能した。