グラーフの御披露目間近

出来たてのフォルテピアノ(グラーフ)、最初に試させていただく機会でした。

Jan van der Sangen ヤン・ファン・デア・サンゲンさんの5年越しの作品。なんと生っぽい音。調理されていない生肉(?)と比べるのも変ですが、材料の木材が形となり、職人の手によって楽器となり、鍵盤となり、弦が張られ、音楽が奏でられる。弾き手とともに楽器が精製され、成長し、職人がさらに調整する。そのまだ生肉が焼けていないレアな段階に入る感じ。味付けも飾り付けもこれからです。

良いものを作ろうと目指していくこの過程に携わらせてもらっているんだ、と楽器を弾く姿勢に気が引き締まります。数年後に鳴る楽器を見据えて、良いエネルギーをたくさん受けて成長していってほしい。あと2週間では楽器にしてはまだまだ出来たてですが、お披露目ではこの楽器の持つ大きな潜在性を感じていただけるのではと思います。

まだ外塗装もされていない天然木の感触が音色にも現れます。
ハンマーの打弦部分にある、新品の鹿皮がこれからどんどん凝縮されて音色も日々変わっていくことでしょう。

6月19日のお披露目コンサートでは、ヤンさんが以前に制作したベームとともに2台フォルテピアノという超贅沢なコンサートを、素晴らしいピアニスト、アルテム・ベロギュロフ Artem Belogurov さんと演奏させていただきます。とっても楽しみです!

音色はこちらのインスタグラムにアップしました!https://www.instagram.com/kaoru.iwamura.1/

マギーポディウム in Mozarthof

「かおるのマギーポディウム」(家族、子供向けフォルテピアノコンサート)をモーツァルトホーフという学校で、モーツァルトの誕生日の1月27日に演奏してきました!

モーツァルトホーフはスペシャル教育(speciale onderwijs)が行われる、日本でいう特別支援学校に当たります。ここに通うすべての子供達が、ダウン症や、何らかの障害を持ち、学びが困難な子供たちが一般学校よりもゆっくりと、それぞれの子供の能力に合わせた教育を受けています。

このコンサートはお話やシアター的要素もあり、ただ聴いてもらうコンサートと違い、一緒に参加して楽しい時間を過ごしてもらうための企画です。

私の主戦力、シュタインモデルのフォルテピアノを車に積んで、いざ目的地へと向かいます。

この体育館、さあみてください。

舞台の先生、音楽の先生のご協力で黒いカーテンで外光を遮り、舞台照明とカラフルな照明で、雰囲気がガラッと変身しました!

さて、いよいよ第一グループが入場してきました。

中に入った途端に「わー!」「ワオ!」

外見にはどんな障害を持っているかわからない子も多かったです。音に敏感だということで、遮音用のヘッドフォンをつけている子がどのグループにもいました。

最初は緊張感がありましたが、始まってくると皆熱心に聴き入ってくれました。子供たちの反応の素晴らしいこと!!!

ダウン症の子供たちは音楽にとても敏感なようですね。

マギーポディウムは45分のプログラムが標準で内容盛りだくさんなのですが、事前に学校の音楽と舞台の先生と打ち合わせ、子供たちのレベルと年齢に合わせて200名ほどの全校児童を7グループに分けてくださいました。

プログラムも20分、30分、45分と3種類用意し、その場でさらに柔軟に対応できるよう工夫を凝らして準備しました。

コンサートの中で、「よかったらここは音楽に合わせて踊ってもいいよ!」というと、本当に「えー、いいの?」と言ってすぐに踊り始める子がたくさんいました。今までの経験ではなかなかないことでした。

これまでやってきたマギーポディウムで「踊ってもいいよ!」というとシーン、、と恥ずかしがる場合が多いのです。

でもここでは本当に楽しく踊りだすのです。こちらも嬉しくなり、思いっきり踊ってね!!と内心思いながら伴奏に気持ちが切り替わります。

7回の公演の中で、たくさんのことが印象に残っています。

その中で例えば、ベートーヴェンの「月光」の1楽章をダンパー+モデラートペダル(音色が変わる)をオンにして演奏するのですが、曲が終わると通常拍手があったり、言葉を発したり、体を動かしたりの反応がありました。

あるグループの時、その中にはダウン症の子供が多かったのですが、最後の音が消えていくまで、私もずーっと聞き続け、普段以上に長い最後の音、消えた後の余韻を聴き続けました。もう音は終わっている。。。それなのになんと長いこと誰も何も、物音を発しないのです。大抵は雰囲気で自分が音を止める瞬間を決めます。でもこの回では、演奏中からただならぬ深い静けさを感じ、終わってからも長い沈黙。

そうなんです、信じがたいくらい皆が音色を聴き入ってくれて、感じ入り、内面に反応しているのでしょうか。誰もそれを止めないし、自由に反芻しているのです。いうなれば、彼らの感受性にはコントロールというバリアが少ないのです。感じたら、そのまま、感じるまま。まるで無重力でどこまでも続く時間のようでした。

それぞれの子供が違う表現方法を持ち、彼らの外側にいる私たちに伝達されます。

私はこの時の、感じ続けてくれている沈黙の瞬間を一生忘れないことでしょう。涙が出そうなくらい胸がいっぱいになりましたが、次の動作へと自分が移りました。

マギーポディウムの中で、モーツァルトからのお手紙を読んでもらうときがあります。あらかじめ先生と打ち合わせて、このグループは「読む」ことが難しい、とかこのクラスは年齢15から20歳ぐらいまでで読める子も何人かいる、と確認してからスタートしました。子供が読まない時は、先生が読み、そしてほとんどの回で、専門の手話の先生が来て、お手紙の内容を同時に示してくださいました。本当に先生方の熱心なご協力には感謝です。

ある回の時、手を上げてお手紙を読みたいという子がおり、その子はフォルテピアノを触ってみたい、という時も手を上げて熱心だったので、読んでもらうことにしました。でも読むのは難しかったらしく、一つ一つ単語を読むのに、とても時間をかけて、手紙を読み終わるのに数分かかりました。みんなじっと静かに待ちました。その我慢強さにまた感銘を受けました。

読み終わった時、クラスの子供達が「よくやった!」と拍手で讃えました。

常に互いにリスペクトしあい、頑張っているクラスメートの努力をサポートしていました。その子も皆の前で緊張しながらも、頑張ったことを誇りに思ったことでしょう。

手紙を読んでくれた子供の年齢は後で聞くと、14歳でした。体は自分の8歳の娘と変わらないくらいの身長で、読むスピードは5歳ぐらいの年齢というところでしょうか。でもこのように障害がない子供の標準と比較することは無意味なことです。彼女の努力と好奇心、鋭い感受性が居心地の良いこの空間で保護され、安全にゆっくりと成長しているのです。

魂の触れ合いのようなものを、この学校空間ではとても感じました。

ストレートに感受性がぶつかり合い、「楽しい」という気持ちをお互いに交換しました。

印象に残った出来事が多すぎて、圧倒され、消化するのに時間がかかりました。

またの機会に書きたいと思います!

ミュージアム・ナイト in アムステルダム

11月3日(土)は Museum N8 (Nacht – 夜)であった。

これは、アムステルダムの博物館(56館が参加)が夜7時から夜中の2時まで開き、様々な特別な催し物をやっている。毎年開かれ、一週間前にチケットは売り切れだったそう。

http://museumnacht.amsterdam

私はピアノラ博物館で、宣伝も兼ね、20分バージョンのマギーポディウム(9月13日のブログ参照)で2回参加させていただくことに。

 マギーポディウム(facebook いいね👍ボタンお願いします♪)

初演での反省点、隅々まで気が行き届かなかったオランダ語のセリフを初演よりはコンパクト、かつ正しくしようと、息子の前で練習してみると、直されるわ。。。9歳ともなると、オランダ語もきちんとしてきているようで、息子の話す程度の言葉遣いと文章の長さが、子供向けに話すのにはちょうど良い感じであった。

いつも日本語を教えようと、躍起になっている母の真剣さはのれんに腕押し。その代わりちゃんと学校で勉強しているオランダ語は、母の適当な文法で渡り歩いてきたものとは違うきちんとした響きがあり、頼もしく思う。

ミュージアムナイトのピアノラ博物館のところを事前チェックすると、LGBTQ 推薦マークが! レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クィア の略です。(はい、勉強になりました)

実は本番3日前に、「drag queen のグループの方たちとコラボするのどう思う?すごく美しくて、クラシックの歌曲を歌うの。」という電話があり、「はあ?グループ名?彼らのリンクを送ってくれますか?」などと無知な返事をしたところであった。

(もし私のようにこの言葉を知らない方のために。。。簡単に言うと男性で女装の方)

結局、持ち時間も短いし、コラボするのにリハーサルする時間もないので、自分のプログラムだけ集中するということに。

当日。なんと美しい女装集団が、楽器の調律を終えた頃、続々と到着。

香水がんがんの匂いの中、着替えとお化粧に忙しく、実は胸は毛むくじゃらだったり、ゴツゴツの足にストッキングで超高いハイヒール。。。デーモン閣下顔負けというか、仮想舞踏会の仮面というか、美しい厚化粧。10人近いグループでバックステージが賑わっていた。

「ハ、ハロー。すごい綺麗!」と挨拶してみる。

私のマギーポディウムと、ピアノラ博物館のカスパー・ヤンセンのでモンスレーションの合間に30分ほどのステージを夜中まで演奏していた。

公演を見に来た、自分の子供たちや甥っ子も彼らと写真撮ったり話したりして、、、アムステルダムのコアなところで育つと、こういう夜も5歳と9歳で経験することに。いいのかなあ?!どうなのかなあ?!

彼らのプログラムはまず最初ピアノラの伴奏で、マドンナのマテリアル・ガール合唱。そのあと、グループの一人が懐かしい、音大で必須であったイタリア歌曲集より数曲ソロで歌う。ピアニストの伴奏がとても音楽的で、前奏と後奏で癒される!

 

Vital Stahievitchさんのピアノソロもよかった。(ラフマニノフの前奏曲、スクリャビンのソナタなど)

この日に弾いたスタンリー・ホッホランド氏所有の18世紀のスクエアピアノは2度調律した。スクエアピアノのピンのところに手書きでa、b、c、、と音名があるがとても見にくく、年に2度も調律されるかどうかという状態なので弦が切れないようにすごく気を使ってそうっとピンを回してみる。

ここは味わいのある、アムステルダムらしい博物館で、ヨルダーン地区のお散歩ルートにオススメ!ピアノラミュージアム

 

 

 

「冬の旅」への旅

シューベルト歌曲集「冬の旅」。

11月19日のシューベルトの220年の命日に自分の「冬の旅」デビューを果たした。

「冬の旅」の旅の第一歩を踏み出すことができたのも、いろいろなご縁とお声をかけてくださった方のお陰である。共演のGuy さんより、以前この本をプレゼントにいただいた。

 

普段英語の本を読み切る能力は???なのに、がんばってこれは読もうと張り切った。言葉も調べて読んでいるつもりだが、やはり自然科学や歴史、絵画、様々な分野の教養、知識、専門用語が多く、そう簡単に進まない。内容の濃さと興味で、読みたい気持ちはあるのだが、英語力がついていかない。。(汗)

 

そしてこの8月に東京のヤマハで日本語訳を発見!

今年の2月に日本で初版が出たばかりで、1年半眺めた英語版に見切りをつけ、即購入!

 

そしてなんとかコンサートの前までに読み、今後も繰り返し目を通そうと思う本である。

リート伴奏で大事なのはやはり、ドイツ語の意味の把握、音楽と言葉の抑揚の一体感を感じることなので、本を読むことが目的ではないのだが、でもボストリッジの演奏家としての経験と観察力から書かれる冬の旅の分析は、とても興味深く、彼の教養の幅広さと鋭さ、繊細さにはもうほれっぱなし。彼の演奏も本当に心に浸みいる。エモーションがダイレクトに伝わってきて、長年愛聴していたフィシャー=ディースカウとはまた違う新鮮な良さがある。

オランダのスクエアピアノ、1830年頃の楽器で、親密さと「スピーク」できる感覚がたまらなく、お客様にもとても喜んでいただくことができた。

リート伴奏は楽しい!24曲の構成、フォルテピアノでの演奏、テンポ構成、伴奏法、詩の意味、様々な観点から興味の尽きない作品である。Guyさんとの共演も続けていきたいが、一生のうちには両手指くらいのたくさんの歌手の方と「冬の旅」を勉強して、様々な声域でも機会があったら演奏してみたいなあ、と密かな目標を持っている。

 

お城でのコンサート

先週の昇天祭月曜日には、ユトレヒト近郊のルーナースロートというこじんまりしたお城で、年に一度のオープンデーに毎時間コンサート、というイベントで演奏させていただく機会をいただいた。

歴史的なお城の中での歴史的なテーブルピアノの演奏という、セッティングで雰囲気からすでに素敵。

 

お城は13世紀に建てられ、1985年に手放されるまで、そのご家族のお宅として使われていた。最後に住まわれた男爵夫人は離婚後、長年一人暮らしだったそう。一人で住むにはすごく大きい!!逸話によると、オイルヒーターの暖房がまだ完備でない頃、夫人は家の中で部屋から部屋へと自転車を乗り回していたそうだ。

オランダっぽい。。

 

15分のミニコンサートということもあり、子供連れも誘いやすく、来やすく早くも予約で一杯。

約60席の天井高めの壁画のあるお部屋に、絵のように治まったブロードウッドのテーブルピアノ(1829年製) 。

・・・と偶然の「ディズニー白雪姫」色スカート。(笑)

 

1時間おきに計6回弾き、360人ほどのお客様にブロードウッドの現役な音色を聞いていただくことができた。プログラムはシューベルトの即興曲から一曲は毎回、(3つのプログラムを用意)他にベートーヴェンのバガテルや、エリーゼのために、楽興の時3番など親しみやすい曲に。

 

子供達、おじいちゃん、おばあちゃん、お友達、生徒さん一家、知り合いの方達も来てくださり、喜んでいただいて、幸せな気持ちになった。幅広い層の方にフォルテピアノの音色を聞いていただけたことが何よりもの喜び。15分で3−5曲というのは、初めて見る、聴く音色には十分な時間である。

普段のコンサートについて考えさせられた。

クラシックって、本当に馴染みやすいのだろうか。敷居の高いプログラム、になっていないだろうか。場合によってプログラムの内容はとても大事。

今回のような場所で、フォルテピアノをたくさんの幅広い層の方に聞いていただけた、ということが自分の幸せ感につながっているのでは、と思う。もっとたくさんの方に素敵なヒストリカルピアノの音色を聞いてもらいたい。。。そういう使命感が達成されたのかもしれない。

 

 

お天気も最高で、広いお庭ではお城見学の後、皆が外で遊んだりお散歩を楽しめる。

 

 

使われていた食器も展示してあったが、オランダの1790年頃のこの地方のもので一枚数十万円の価値とか。ナチュラルな染料の色で、かわいらしい。

 

 

そうそう、驚いたのは、このお城の上の一角には子供連れ家族が住んでいる。それは、ふつーの人で、ユトレヒト市の現在のこのお城の所有である団体が、賃貸している。。。

この壁画の中の隠し扉からもそこに通じているそう。

お城入り口に面した二つの元馬小屋のうちの一つも、改装されて普通の住宅として住まわれている。それで収入になるし、ということ。この方達の住宅環境をまもるためにも、お城は日曜日は公開していない。現在は週に3回ほど、半日から一日だけ公開しているそうだ。

 

おみやげにお城の最後のお住まいだった男爵夫人のものという、100年以上前のコーヒーカップをいただいた。

 

カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ生誕300年

今年はバッハの息子達の中でも最も才能があったと思われるカール・フィリップ・エマヌエル・バッハの生誕300年にあたる。

6月に小さな会場でそれにちなんだリサイタルを開いた。

タイトルは’ Bach & Bach’ .

バッハが好き、という音楽愛好家は多いがほとんどがヨハン・セバスチァン・バッハの父のほうを指すだろう。やはりカール・フィリップだけではお客さんが来てくれそうにもない。だから父と息子の音楽を比べて聴ける企画にした。

フォルテピアノで主にカール・フィリップ、17世紀イギリスモデルのスピネットで父バッハを演奏。

プログラムはカール・フィリップの「識者と愛好家のための曲集」よりロンドやソナタ2曲、そして「フォリアの主題による変奏曲」、「幻想曲ーカール・フィリップ・エマヌエル・バッハの心情」。

父バッハはフランス組曲の第5番よりアルマンド、クーラント、サラバンド、ジーグ、インベンションとシンフォニアよりニ短調、ニ長調、ヘ長調、ヘ短調を並べて演奏した。

カール・フィリップはオリジナルのZahlerというチェコのフォルテピアノ(5オクターブ半)が繊細な心情を表すのに頼もしい私の相棒となってくれた。強弱の差が出せるフォルテピアノとチェンバロのひとまわりヴォリュームの小さいようなスピネットと比べる場合、どんな競争になるかと思いきや、どちらの良さも返って引き立ったようで、どちらもよかったという感想をたくさんいただいた。

音楽としては、カール・フィリップの方が良い作曲家、聴いていて面白いね、という意見も。。。

どちらにも同じタイトルの作品を選ぼうと最初は考えがあったのだが、それが面白いことにほとんどないことがわかった。まさに父の音楽の趣味に反抗していたのだろうか?!

カール・フィリップには組曲、「プレリュード&フーガ」の組み合わせもほとんどないし、カール・フィリップに多い「ロンド」、「ソナタ」は父バッハにほとんどない。(ヴァイオリンのソナタは有名)父バッハは「ファンタジー」と名のつくものは意外と少なく、オルガン曲に少しあるのと、有名な「半音階的ファンタジーとフーガ」などである。スピネットでその曲を試しに練習していたが、今ひとつ迫力に欠ける。

スピネットは豊かな音色が出るが、やはりボディーが小さいため、2段鍵盤のチェンバロにはかなわない。私は常々、それぞれの楽器には「サイズ」があると思っている。

サイズの合わない洋服を着るとその人の良さが出ないのと同じく、作品のサイズと楽器のサイズもマッチしないと、しっくりこない。今回「半音階的ファンタジーとフーガ」をスピネットで演奏したら、スピネットって物足りない楽器だね、この曲って今ひとつな曲? という楽器にも曲にも残念な感想が出かねないのだ。

インヴェンションとシンフォニア、聴きやすく声部の少ないフランス組曲はとても良く楽器が鳴ってくれたと思っている。曲がシンプルで音が少なくても、作曲家の素晴らしさはそのままである。ヘ短調のシンフォニアのなんと深みのある内容。

 

この日のコンサートの落ちは、ちょうどサッカーのワールドカップでオランダが試合する日で、ちょうどコンサートの時間と同じ!控え室の窓から見えるアムステルダムの通りのカフェはオレンジ色でいっぱいで皆、大きな画面を見ている。

サッカーだから来ないというお客様はもちろんいた。(生徒さんの家族一家も:))

来てくれた音楽好きのお客様達には楽しんでいただけたようで、良いコンサートとなった。会場のピアノラ博物館のバーでは、コンサートの終了後、壁にかかった古い大きなオルゴールを当時のコインを入れてまわしてくれた。とても豊かな響きをワインとともに最後まで残っていたお客様数人と堪能した。

 

ラ・コルデ・ヴィブランテ日本ツアー終了!


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シチリア出身のギタリスト、ダリオ・マカルーソ氏と共に3回の日本でのコンサートを行いました。浜松市の楽器博物館(10月26日)、牛久市エスカードホール(11月2日)、石岡市ギター文化館(11月3日)。

今回は私たちのCDのプレゼンテーションも兼ねて、苦労の末産み出したCDを携えての旅。たくさんの嬉しいコメントをいただいて、大成功のうちに終了となりました。

このコンサートに足を運んでくださった皆様、本当にありがとうございました!

それからこのコンサートの準備のために快くお手伝いをしてくださった、友人、知人には本当に感謝しています。

浜松ではオリジナルの1805年頃のトーマス・ラウド(クレメンティの名前が一緒にネームボードに)のイギリス製スクエアピアノ。

味わいのある軽やかな音色に、芯のある柔らかい音色のダリオのギターととてもよく融合しました。

Thomas Loud hamamatsu 2

Thomas loud hamamatsu 3

この花模様はクレメンティ社のピアノによく見られますね。共同に制作した楽器のようです。

Thomas loud Hamamatsu 2013

ある方からこんな感想をいただきました。ここに筆者の許可を得て掲載します。

『一昨日はとても素敵なコンサートを開いてくださり有難うございました。
フォルテピアノの色や形がとてもエスカードに似合っていて、扉をあけたら別のホールかと思いました。
それに、19世紀のピアノの音は、私が想像していたものより、ずっと響きに重みがあり、ものすごい存在感でした。
心配していた響きも、前のブロックのすぐ後ろ、つまり通路をはさんで一列目やや右寄りで聴いたのが功を奏しました。

フォルテピアノはまるでサラブレッドの毛並みのようでした。
静かな光に包まれて、たてがみをふさふささせながらゆっくりスローモーションで走っている。それも夢の中で。
そういう音です。

特に、ベートーヴェンの作品は、テーマが魔笛だったので、夢の中でモーツァルトが弾いているピアノを聴いているような気分でした。時には、ハープのようにも聞こえるその音色はギターとちょうどよいバランスを保ちながら、華やかに展開してゆきました。

テーマがよいと、こんな風にアレンジできるんだな、と感心しながら聴いていた部分があり、CDでも毎日気に入ってきいてます。

その他の曲も、モダンの楽器でやるより、即興的な部分が多いせいか、すごく自由に解き放たれた響きがあります。
ギターがメロディになると、甘くて哀しい恋愛映画をみているようです。

こんな素晴らしいデュオですから、いろいろ大変なことも多いとは思いますが、ぜひとも10年、15年と続けていってくださいね。

かおるさんのレクチャーがとても私は好きです。簡潔でいて、はじめての人にも興味をい抱かせるような話法です。いつか、ギターやフォルテピアノの楽器を部分的に写しながら、古楽器の世界へようこそ、という内容の短い映像を作ってくれると嬉しいです。ぜひ生徒たちにもみせてみたいです。』

Mさん、ファンタジー一杯の感想ありがとうございました!

牛久エスカードホールでは、地元での広告などを見て来てくださった方もおり100名を超える盛況となりました。古楽器には音響も良く、サイズも中ぐらいで利便性もありとてもよかったです。ショッピングセンターの最上階にこんなスペースがあると、普段着でふらっと音楽を楽しめるようになりそうです。今日は何かやってるかなあ、とお買い物帰りにちらっとのぞいてみるのもいいかもしれません。

ギター文化館は、さすがギター専用のホールとあり、素晴らしい音響スペースでした!!!木村館長も、フォルテピアノはここの音響に抜群でした、とのことでした。お客様が少なめだったのがとても残念でしたが、木目で天井の高い、チャペルのような素敵なスペース。フォルテピアノの音色の豊かさがよく聴き取れるホールだったのではないでしょうか。味わいあるパノルモギターの音色、ダリオのクリアーな音作りがフォルテピアノと対等にやりとりして、贅沢感、幸せ感の中で演奏することができました。

なおCDは次の場所で購入可能です。
東京古典楽器センター  tel: 03 3952 5515
http://www.guitarra.co.jp

ギター文化館 tel: 0299 46 2457
http://guitar-bunkakan.com

CDcover La Corde Vibrante

定価2300円(税込み)(送料込み2500円にて上記より郵送可能)
私のホームページからもお申し込みできます。
ご希望の方はメールでお知らせください♪
kaoruiwamura.info@gmail.com

コンサートの前日に茨城ラジオ放送に生出演しました。
コンサートについての紹介やどのようにフォルテピアノと出会ったかなどをお話しして、CDから数曲かけてくれました。

ハウプ・エマー氏作曲の新曲はたくさんの方より、「よかった」「この方は日本をよく知っている」「面白かった」というご意見をいただきました。

またいつかダリオ氏と日本での公演の機会がありますように。

クオピオでの演奏会

8月、北欧歴史的鍵盤楽器祭にて、ソロリサイタルとマスタークラスを行った。

生後六ヶ月の娘を連れていったのは、母乳育児を続けたかったのが一番の理由で、あまり泣かない楽な子でもあったので、特に問題はなかった。フェスティバルのほうで経験のあるベビーシッター(女性同士のカップル)さんを探してくれて、すぐ近くの安全な所にいてくれたのでお陰でなんの心配もなく仕事ができた。

前日の練習は自分の側でこんな感じ。

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クオピオで知名度がおそらくまったくない自分のコンサートに誰が来てくれるのだろうか、と思いつつ、、、オーガナイズ関係者やマスタークラス参加者の学生達もたくさん来てくれて、少ない中でもとても雰囲気のよいコンサートになり、自分にとっては充実した演奏会であった。初めてのお客様、それも違う言葉を話す、日本からかけ離れた場所にある国でのコンサート。

大きなジェスチャーを交えて、ハッキリ話そうと努めてスピーチでもするかのような気持ちだった。

異国の、オランダでもない土地、フィンランド。。。そういうことが必要と舞台の上で感じられたのが、不思議である。

音楽が共通の言語であることは、本当に素晴らしいことである。それに助けられて、今までオランダでも暮らして来られた。

次の日のマスタークラスは3人の生徒であった。皆若くて、一生懸命で可愛い、、、と思ってしまう自分の歳を感じる。

一人はチェンバロでのレッスンで二人がフォルテピアノ。短い時間に様々な発見をして、一緒に考えていく作業はとても楽しい。

一人はiPadでの楽譜。。。

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譜めくりに、タッチスクリーンを上にずらす。書き込めないのが不便そうだけれど、、、。

少し午後に暇ができて、街へ散歩。ベビーシッターさんお勧めのこの地域のスペシャルな食べ物ということで、Kalakukkoというものをお土産に購入。キロで買うのだが、最低が1キロで、それを買った。(約25ユーロ)家であけてびっくり。分厚くてぎっしり焼かれたライ麦パンの中に、ベーコンとお魚がぎっしり。パンが中の具を密閉しているので、一ヶ月はもつそうだ。昔木こりがこれを食料に持って仕事に出たそう。魚の部分も発酵したような、独特の味わいが出ていて、とても美味しかった!

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クオピオはまさに湖に囲まれた街。どちら向きに歩いても、いつかは湖に到着。

街の中にも緑の公園が、あちこちにあり、空気が本当に綺麗で美味しかった。

朝、早起きした時の新鮮な空気、あの感覚が一日中あるような、常に綺麗な空気の場所。

そうそう、街の中心地の広場にマーケットが出ていて、ジャガイモが売っていたのだが、箱に入っている。

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この箱は、一升のようなフィンランドの単位、1カッパというそうだ。

英語がほとんどマーケットでは通じなかった。

どこかおとぎの国にでもいるような感覚が時々する。

冬にはマイナス35度になるとう、クオピオ。フェスティバルだけではわからないフィンランドの人々や文化にあまり触れることはできなかったが、厳しい冬の寒さを知る物静かな人々の心の中にはものすごく深い英知が潜んでいそうで、深い森に住む妖精が出てきそう、なイメージは遠くないと思う。

フィンランド、クオピオへ

この春、良いニュースをいただいた。

8月のフィンランド、クオピオ市におけるリサイタルとマスタークラスに参加するために、朝日新聞文化財団より助成金をいただけることになった。

クオピオ市で、歴史的鍵盤楽器のフェスティバルが行われている。

Nordic Historical Keyboard Festival

8月14日から23日の間、クラヴィコード、チェンバロ、オルガン、フォルテピアノでのソロやアンサンブルの演奏会が毎日、計22回、そしてマスタークラスも開かれる。アメリカやメキシコからも演奏者が来るそうだ。そんな国際的な場に招待され、マスタークラスはレッスンを行うという貴重な経験。

このフェスティバルは現代音楽にもオープンで、今年は4曲の世界初演が行われるそうだ。

私はシュタインモデルの楽器にてソロリサイタル。

クラシックな作品に加えて、マルドナド氏の現代曲も披露する。

マルドナド氏の作品は以前演奏した事があり、作曲家にもミラノに会いにいき、録音を聞いてもらった。

いつか私のために作品を書いてくださる、と約束してくださってその日を心待ちにしている。

フォルテピアノはその当時の作品を演奏するのは楽しいのはもちろんだが、現代曲でも楽器の特性とマッチして「響き」として聴いてもらえたら古楽器での現代曲も素敵だ。

同じプログラムでアムステルダムにて7月21日に演奏予定。

自分のシュタインモデルのフォルテピアノで弾くので

お近くの方はどうぞ聴きにきてください♪

「夜の魔女」プロジェクト

4月の27、28日とアムステルダムのオルゲルパークにて面白いプロジェクトに参加した。Huib Emmerの’Nachthexen’ とAnne La Bergeの’Lonely Stats’という2曲の新曲発表。

第2次大戦中のロシアとアメリカのパワフルな女性、というのがテーマ。

私はNachthexenのオルガンパートで参加。

この曲は、3人のオルガニスト、トロンボーン、コントラバス、フルート、ナレーション、ラップトップ(電子音楽)のために書かれた。

Nachthexen「夜の魔女」とは、第2次大戦中にロシアでは女性パイロットがおり、ドイツにたくさんの爆弾を落としたが、レーダーから逃れる飛行機に乗り、音もなく現れて消えて行くのでそう呼ばれていた。姿を消す薬を飲んでいるのだ、という噂まであったそうだ。3人のパイロットとこのストーリーにインスピレーションを得た作品。

Lonely Stats(寂しい統計)の方は、アメリカの女性にまつわる。同じく第2次大戦中、男性が戦争に行ってしまいアメリカの野球界が人手不足となる。その頃女性のプロ野球チームが発足。その選手達のことがもとになっている。作曲家のアンネいわく、「野球は三振やストライクの数、スコア、すべて統計であり、数で比較されている」作品は、Nachthexenと同じ楽器編成で、オルガンは一人。コンピューターがサインを出したら、インプロヴィゼーションを始めたり、決まったフレーズを演奏したりする。’guided improvisation’ と呼んでいた。

オルゲルパークで、生まれて初めて、コンピュータつきのオルガンを見た!

実は、ハンスさんという方が、発明して作った世界にひとつの楽器だそうだ。

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楽器はホールの大きなパイプオルガンのパイプが共用されて鳴るので、音色は生のオルガンのまま。

私は19世紀後半のタイプの小型のパイプオルガンでホッとした。ストップのところに陶器の材質が使われていて素敵だった。モニターで指揮者を見る。

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ロシアの軍事ニュース関係の(?)テレビ局で翌日このコンサートのことが放映された。

http://tvzvezda.ru/schedule/programs/content/201005071133-4zo9.htm/201304291026-q4xl.htm

約8分45秒のところ。

タイプの違うパイプオルガンが四方の壁に設置され、とても贅沢感のあるホール!昔教会であったところを改装して建てられている。アムステルダムの中心地フォンデルパークに接する。